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2017年8月アーカイブ

 まだ高校生の頃にね、どなたかのエッセイの中で「カシミヤのセーターはとても高価なモノだけど成功した大人のセーターだ。」というような事が書いてあってさ。だけど今と違ってカシミヤのセーターなんてその辺りで売っているワケでは無く、ボクは見た事も触った事も無かったから、一体どんなモノなんだろうとずっと思っていたんだよね。周りには誰も知っているヤツ居なかったし。  で、結局何も分からないまま上京して来て、ある日たまたまバイト先の先輩に日比谷の三信ビルの中の「ワールドサービス?」でハンバーガーをご馳走になったんだよね。


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 そしてその並びだかに有った輸入物を扱うお店(お店の名前忘れちゃった)で先輩が派手なストライプのARROWだかMANHATTANのロングポイントシャツを買った帰りに銀座のテイジンメンズショップに寄ったんだよ。まだ2階にVAN SNACKが有ってね。

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そして色々と見ていたら先輩が急にガラスケースの中を指さして「お~!イギリスのカシミヤ(のセーター)が売ってるぞ。」言うから「え?ホントに!」聞いた途端、ボクが一挙にボルテージを上げたまま中を覗いたら何か黒いタートル?みたいなのが置いて有ったんだよね。「そうか、これがカシミヤのセーターか・・・」

だけど、どう見ても当時のボク達の風体では、買わないのが見え見えなのに思い切って店員の方に、恐る恐る聞いてみた「ちょっと手に取って見る事は出来ますか?」そしたら「はい、はい、こちらですね」とか言って、ニコニコしながら意外にもあっさりとケースから出して上のガラスに広げて見せてくれたんだよね。

そしたらもう大変だった。その軽さとふわふわした柔らかい手触りに感動して「ひぇ~!スゴいや!」本当にビックリしてしまったんだけど値段を見て更に、もう一度ビックリしてしまった。「こんなにするの・・・」

ブランドもデザインも全然覚えていないけど、ボクのカシミヤ初見参だった。

その後、気にしてあちこち見ているとイギリス製のセーターは丸善や伊勢丹にも売っている事が分かって来てね。だけどカシミヤに至っては、みんなガラスケースに入れられていて、その辺の棚にひょいと置いてあったりしないからガラスの外側から凝視してデザインを見たりブランドを覚えたりしていたんだよね。時々、白い手袋をした店員のおネーさんにブランド名の読み方を聞いたりしてさ。

BALLANTYNEROBERTSON、そしてALAN PAINE・・・どれもこれもイギリスのメーカーで素晴らしくステキだった。

そんな事をしている一方でアメ横にも相変わらず行っていたんだけど、最初は全然気が付かなかったんだよね。実は「る~ふ」にもカシミヤのセーターが売っていた。大体アメ横のお店にはアメリカの製品しか無いもんだと思い込んで居たから、イギリスのセーターが有る事自体が、ずっと分かっていなかったんだよね。(一方、大井町の「みどりや」でMcGEORGEPETER STORMのセーターは目撃していたけどね)

「る~ふ」では、そんなに多くは無かったけど、ガラスウィンドウの中にはカシミヤのROBERTSONだったかな?のアーガイルやALAN PAINEのカーディガンやシャギードッグなんかが入れられていてね。そして他の棚にもよく見てみるとMc.GEORGEPETER STORMなんかがアメリカのLORD JEFFWOOLRICHなどとごちゃ混ぜに置いて有った。

結局その日購入したのはPETER STORMのオイルドセーターだったんだけど、カシミヤのセーターはいつか絶対に欲しいと思っていたんだよね。特にALAN PAINEのヤツ、何だかブランド名とタグが一番格調高くてカッコいいと思ってさ。

その後「る~ふ」に入る事になったんだけど、ちょうど1月くらいだったのかなァ、店頭にはもう余りセーターは残ってなくてLORD JEFFPETER STORMなどが何枚か有った程度でALAN PAINEなんてかけらも残っていなかった。

で、その年の秋冬は社長や先輩の仕入れでカシミヤ製品の入荷というのは無かったんだけどWILLIAM LOCKIEのラムやMcGEORGEのシェットランド。そしてBYFORD, DALESt.JAMESALPS等といった初めて見るブランドなんかが有って毎日触りながら楽しくて仕方がなかった。おそらく、この頃からボクのセーター好きは形成され始めたんだと思うんだよ。

そして、その翌年から一部仕入れをさせてもらえる事になり、1社だけはどうしても自分が担当したくて社長に直訴してOKをもらったのがデスモンド・インターナショナルという当時のBARACUTAGRENFELLの輸入代理店だったんだよね。

「やったァ!」ってなもんでスゴく嬉しかったよ。だってデスモンドはALAN PAINEBYFORDの代理店でも有ったからね。

それからボクはデスモンドの担当の方からALAN PAINEの資料を頂き、1907年の創業で20年代には当時のエドワード八世(ウィンザー公)の着ているレジメンタルストライプ入りのVネックのセーターがALAN PAINE製だとか、50年代には、あの有名なテムズ川で行われるオックスフォード大学とケンブリッジ大学が競う「ザ・ボートレース」でオックスフォード大学の選手のチームストライプ入りのケーブルニットを供給していた話しだとか、また英国女王より授与されるQUEEN'S AWARDを受賞するという栄誉に輝いた事なんかを教わったんだよ。

当時のデスモンド・インターナショナルの代表だった中牟田久敬氏の著書(81年発刊)にも詳しく記載が有るね。


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そしてしばらく経ち、展示会が開催された際に、めでたくボクはALAN PAINEのカシミヤを、自分が買うのも1枚入れて少量だけど発注出来たんだよね。ショールームであれこれ触りながら悩んでいると、どれもこれも良さそうに思えて、なかなかその場から離れる事が出来なかったよ。79年の秋冬のコレクションだった。

え?どうして79年ってしっかり覚えているのか?って。実は、翌年80年の春頃に受けた雑誌「JJ」の取材写真が残っていて、ちゃんと806月号と記載が有るからなんだよね。


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この日ボクは一番のお気に入りのBARACUTAを着て、そしてちょっとしか見えないけど、インにはしっかりと勝負ニットとしてALAN PAINEのカシミヤのVネック(右画像=もうかなりボロいけど、やっぱり捨てられないんだよね)を着ているんだよ。

そして画像の中で僕の左ヒジの下辺りに積んであるのがALAN PAINEのコットンのクルーネックなんだよ・・・って誰も分かるワケ無いよね。

でも、その頃一番売れたのは、ちょうどプレッピースタイルがピークに達していた頃でも有ったからだと思うけど、実はシェットランドのクルーネックやアーガイルだった。


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まァ、そんな事が有ってからずいぶん経ったけど、今回思う事が有って久しぶりにカシミヤのニットを発注してみたんだよね。それも正真正銘、英国製ALAN PAINEのヤツ。何だか嬉しいよねェ。

形は今の気分なら絶対クルーネックだよね・・・って結局自分が何着か欲しかっただけなんだけどね。

それとも、どなたかお付き合い頂ける方が居たりするのかな?


 以前にも自分のブログのどこかに書いたと思うんだけど、とにかくボクはBARACUTAの#G-9を始め、チェックの裏地が付いたアウターが昔から大好きなんだよね。

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 ボクがまだ子供だった昭和の時代には、大人たちの間で「ハイカラ」という表現が残っていて、当時京都の「大丸」に有った特選売り場のガラスケースに入れられた直輸入物のMc.GREGORやMUNSINGWEAR、BURBERRY等の「ジャンバー」(注:ブルゾン)とか「オーバー」(注:コート)などと不思議な和製英語で呼ばれていた上っ張りや防寒外套に鮮やかな格子柄の裏地を付けるなどという、和装の世界観には無いような西洋趣味のしゃれた様を見て、時々デパートに連れて行ってくれた母親がよく「ハイカラやねェ・・・」言っていたけど、ボクも「外人が着る洋服はホンマにカッコええなァ・・・」ガキのクセにそう思っていた。
 中学生になってVANの洋服を買ってもらうようになった頃もタータンチェックの裏地が付いたブレザーをおねだりしながら、やっぱり同じように思っていた。「絶対オシャレやん!」
 今でもそう思っているよ、そんなアイテムを眺めているだけでワクワクするもんね。
 そしてその後もそういったアイテムは必要以上に増え続け、アメ横時代に買ったウールのタータンチェックを張り付けたWOOLRICHのマウンテンパーカや、裏がブラックウォッチタータンのGLOVERALLのダッフル、名もない薄汚い柄としか言えないようなチェックの裏地が付いたMAVERICKのGジャンとかね。何だか他にもいっぱい有るよ。

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 何かね、裏地にチェックを使ったアイテムを見るとすぐ欲しくなっちゃうんだよ、悪いクセだよねェ・・・いまだに全然治らないけど。
 だけどね王室御用達の栄誉にも輝いた、あの大英帝国を代表するチェックの裏地のアウターと言えば・・・のBARBOURの場合は状況が少し違っていた。
 実はボクのBARBOURデビューはだいぶ遅かったと思うんだよね。当時アメ横の中には売られて無くて、たぶん広小路の松坂屋付近に有った「●●銃砲店」だったかな?というお店のウィンドウにディスプレイして有るのを見て、なんとなく存在は知っていたという程度だった。
 だけどオリーブ(SAGE)グリーン色のシェルにブラウンのコーデュロイの襟、そしてタータンチェックの裏地という組み合わせには、紳士の国の大人っぽい品格が感じられて、さすがイギリスのアウトドアアウターらしく、とってもカッコいいと思っていたんだよね。  
 ところが実際に手に入れたのは80年代の後半くらいだった。
 コーデュロイの#G-9との交換要員として先輩から譲り受けたのが最初で、ニューヨークのマディソンアヴェニューに有るBROOKS BROTHERSの通りを挟んで反対側に有るORVISで買ったという先輩の必要以上にくどく、そして有難い?お話しだったけど、1~2度着てみたらやっぱり何だかベタベタした表面と機械油のような匂いがどうしても馴染めなくて、あんまり好きになれなかったんだよね。友達と一緒に電車に乗った時も、そいつは何だか離れて立とうとするし・・・。で、着るのを止めちゃった。
 それで、結局たたんで他のモノに密着しないようゴミ袋に詰め込んだままかなりの期間放置された後、アメリカに引っ越す時にいろんなモノと一緒に実家に送ったままになっていたんだよ。 そしてそのまま忘却の彼方に追いやられていてさ・・・
 そしてその後おそらく10年ほどが経過し、再びそのゴミ袋が何かの時に実家で発見され、そして開封されたのは何と21世紀に入ってからだったからね。タイムカプセルみたいなもんだった。
 恐る恐る引っ張り出してみると見事にペッチャリと貼り付いていてさ、所々カビだか何だか正体不明の粉みたいなのも付着してるんだよ。「ありゃァ~参っちゃったねェ・・・どうすんの、コレ」で、お世辞にも高価なアウターには程遠い景色で、真空パックのオイルサーディンみたいなもんだった。但し、かぐわしい機械油の香りは見事に健在でさ。
 仕方が無いから、「どうせ忘れてたんだから、もうこの際どうなってもいいや!」と思い、台所用洗剤をボトル半分程たっぷり振りかけて洗濯機で長時間ぐるぐる回して洗ってみたんだよね。
 途中洗濯機の中を覗いてみると想像を超えたレベルの、かなりえげつない色の水になっていて焦ったけど、洗い上がってみると意外にもいい感じで再生していて、ちょっとホッとしたよ。
 問題の匂いも有る程度消えていて、形を整えて干してみたら全体的に色も白っぽく変化しコーデュロイの襟やポケットの周りのアタリ感もなかなかの顔つきになっていた。
 かくして、ボクに嫌われていた問題児BARBOURは、再びめでたくワードローブに加わる事になったんだよね。
 そんなこんなで、その後BEDALEのBLACK(これもBLACKWATCHタータンの裏地が超カッコいい)を買い足し、そして本命カラーDRESS GORDONの裏地のSAGEもあらためて買い直さなくちゃね・・・と思っていたら、10年ほど前だったかに突如裏地のタータンチェックが変更になっちゃったんだよね。「え~!」だった。

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 これは、良いとかダメとかいう事では無くて、あくまでも個人的な好みの話しなんだけど、ボクはドレスゴードンの裏地のモノの方がやっぱり好きだったし。
 「あれ~?どうして・・・やっぱりイギリスのアイテムらしい、あのドレスゴードンの裏地が良くて欲しかったのにィ。」思ったけど、まァそのうちに輸入元にでも聞いて、古い在庫を探してもらうから・・・なんてやっていたら、在庫などとっくに完売していて本当に世の中から姿を消しちゃったんだよね。
 下はちょっと古いカタログだけど、代表的なアイテムは全部SAGEグリーンにドレスゴードンの裏地のモノで紹介されているんだよ。

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 そんな事が有って「アレ、やっぱり欲しかったなァ・・・失敗しちゃった。」ずっとこの何年か思っていてね。
 そしたら同じような事を考えているヒトは必ず居るもんだよね、とうとうドレスゴードンの裏地が装着された復刻BEDALEが、細っこくない昔ながらのオリジナルフィッティングで限定着数ながら、この秋1度だけ発売される事になったんだよね。やったね~!嬉しいなァ・・・ボクみたいな小デブのオヤジには「待ってました!」って感じだよ。

注:今回の復刻はオリジナルフィッティングのBEDALESAGEカラー1色でドレスゴードンのライニングを装着したものとなっています。

またブログ中で触れております表面素材のベタベタとした感じや匂いに付きましては、現在のインラインのアイテム同様当時よりも大幅に改善されたものとなっております。

別売りのデタッチャブル・ウォームライナーも当時のスナップ止めのモノでは無く、現在販売されているウォームライナーがそのまま装着出来るようになっております。

 

 





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