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2016年4月アーカイブ

第123回「納得いくまで・・」

 昔からシャツというアイテムが、かなり好きなんだよね。特に一番好きで長年着ているボタンダウンシャツに付いては自分なりのコダワリだとか美学と言うか、各ディテールに対して理想が随分以前からハッキリと有ったんだけど、いざオリジナルとして作るとなると生地の買い付けロットや生産数量、そして日本製でという条件だったからそれに伴う生産工賃等の問題で実現するまでにとても時間が掛かり、ようやく最近少しずつ作れるようになったんだよね。  
 だけど当初から一番のハードルというのが、実は工場の縫製技術レベルの問題だったんだよ。実際にボクが描いた試作サンプルの仕様書を見た途端に2軒の工場さんからたて続けに辞退され今の工場さん・・実は3軒目だからね。 
 そんな紆余曲折の末にいざ出来上がってみれば、もちろん自分の思い込みで作ったボタンダウンだから当然と言えば当然だけどスゴく気に入って着ているよ。全然文句無いもんね・・って、オーダーメイドみたいなもんだから、当たり前か。 
 ただ、正直なところ幾らボタンダウンがアメリカンスタイルのベーシック・スタンダードだとは言っても、あまり毎日お米のゴハンを食べていると時にチャーハンにしたり、はたまたトーストやパスタが食べたくなったりするように、違う衿型のシャツも時々着たくなる時が有るよね? 
 まァ、実際メンズシャツにはボタンダウン以外にもレギュラーカラーやワイドスプレッド、バンドカラーやタブカラー、ワンナップカラー等様々な衿型が存在するのだけど、ボクは自分の好きな格好が基本的にアメカジなので、ドレスっぽいのもダメだし、そうかと言って基本型だと言われるレギュラーカラーは余りに特徴が無いというか、どうしても物足りなさを感じてしまうんだよね。だから、どうしても自分のテイストを主張するだとか、コダワリを表現するためにボクがボタンダウンの次に好きで良く選ぶ衿型はやっぱりラウンドカラーが多くなるのかなァ。 
 あ、前々回にブログに書いたウェスタンシャツやワークシャツなんかは、レギュラーカラーだけど特別ね。ウェスタンシャツやワークシャツに対するコダワリは衿の形では無くてフラップポケットやヨーク、スナップボタン等のディテールが主張部分だから。要するにボクは、あまりディテールに特徴が無いシンプルなシャツが好きじゃないという事だと思うんだよ。 
 ボクが一番最初に着たラウンドカラーのシャツ、実はちょっと異端児だけどKENTのピンホールカラーだったんだよね。(分かるかなァ?画像のような衿型だよ、きっと最近はほとんど見ないよね?) 

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 画像よりも、もっと細い2インチくらいの細身のニットやレジメンタルのタイのノットをもっと小さく結び、そして上手にディンプルを作ってカラーピンを刺し込んで持ち上げて締め上げるとカッコいいんだよ。当時ボクは、まだ高校生のクセにネイビーブレザーやナローラペルのグレーのアイビースーツにピンホールを合わせて着たりしていた。 
 ところがこのピンホールカラー、気が付いたらその頃繁華街に群れて居たリーゼントのヤンキーっぽいヤンチャなお兄さん達が好んで着ていたコンポラスーツ(これも、みんな分かるかな?説明すると長くなるからネットで検索してみてね)に合わせて着ている事が多かったんだよね。 
 玉虫と呼んでいた生地(これも知らないだろうなァ・・玉虫みたいな不思議な光沢の有る生地で、それを使ってコンポラをオーダーするのが、その頃のお兄さん達のオシャレだったんだよ。)のコンポラと共地の細身のタイを同じテーラーにわざわざ作ってもらって締めたりしていてね。 
 だからピンホールシャツを着ていて繁華街で睨まれたりするのもおっかないから途中でボクはタイもピンも付けないカジュアルシャツとしてVネックのセーターに合わせたりしていたんだよ、時々アスコットスカーフをしたりしてね。そしたら学校で友達から、女のコのブラウスの衿みたいだと言われたから結局着るのをやめた事を思い出した。 
 それから随分時間が経って、その次にラウンドカラーを着たのはアメ横に居た頃で、プレッピーの時代ど真ん中の頃に入荷して来たのが、まだアメリカ製だったPOLO BOYS(HOLBROOKというシャツメーカーが生産していたんだよ)のオックスフォード素材のシャツでね、ボタンダウンとラウンドカラーが有ったんだよ。そのラウンドカラーを確か2色か3色買ってフェアアイルのボタンヴェストなんかに合わせて着たり、IZOD LACOSTEのポロシャツの上に重ねて着たり(そんな着方も流行った事が有ったねェ・・確か雑誌"POPEYE"が流行らせたんだよ)と、かなり気に入っていた。 
 その後も、見ると欲しくなるからラウンドカラーのシャツも気が付いたら何だかワードローブに増殖していた。 

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 まァ、そんな事も有って今までにもオリジナルとしてラウンドカラーは何度か試しに作った事は有るんだけど、今回は思い切ってLACOSTEのポロシャツのように真夏にも着られるような自分が納得いくラウンドカラーの半袖プルオーバーシャツを作ろうと思ったんだよね。 
 で、「こんなややこしいシャツは、今まで作った事が有りませんし・・」と言う及び腰の工場さんを説き伏せて試作を繰り返し、ようやく、まず自分が着たい・・と思い描いていた通りのシャツが出来上がったんだよね。思う存分凝りまくった・・と言うか、ああなっていて欲しい、ここはこうでなくちゃ・・などと半分意地になってディテールを具体的に追い込んで行ったら、ちょっと他では見ないようなシャツになっちゃった。 
 だけど苦労した甲斐が有って、スゴくカッコいいと思うんだよね。それに真夏に相応しいようなキュートなプリント柄も今年はいっぱい用意出来たし。  

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 うちのオリジナルお得意のプルオーバーは、やはりプラケットが浅目の3ボタンフロントで、個人的には60年代っぽいクラシックなショートプラケットが昔から絶対カッコいいと思っているんだよ。ポケットはやっぱりペンスロット付きのフラップ付きに限るよね。iPodや小さいスマホ入れても落ちないし・・・イヤホンをスロットホールに通せるし。 
 そしてカジュアルに着用する事を前提としているので、トップボタンを開けた際に余り広がり過ぎないように少し小さめの衿にしてみたんだよね。因みに今回入荷分の生地の一部にはカリフォルニアのROBERT KAUFMANのオックスフォードを使用してみたよ。勿論お約束の台衿部分のキルトステッチは忘れていないからね。  

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 実はこの衿の裏側にボタンホールが切って有って、ブラインド・ボタンダウンという仕様にして有るんだよね。随分昔に友達の古着屋さんで見たLEVI'Sだったかな?のワークシャツの仕様を記憶していて再現してみたんだよ。(上の画像、左側が衿のボタンを留めた状態で右側が外した状態)  

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 この複雑な襟元の仕様を見事に実現したのが今回の工場さんの腕の見せ所だった。このチンストラップのカーブの付け方が事のほか難しいんだよね。(と、言うか嫌がるんだよ・・)   

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 そして柄物だと分かりやすいんだけど、背中上部のセンターはスプリットヨークと言う仕様で「あくまで「出来る限り」の左右対称の"柄合わせ"」をお願いしているんだよね。(大柄のマドラスチェックだとか不規則なプリント柄なんかは当然限界が有るから困難だけど)そして右側がプラケットやパッチアンドフラップポケットの柄合わせ・・・(ただし、あくまで手作業だし、少しズレちゃう時も有るよ。"出来る限り"だからね)もちろんお約束のバックボタン、そしてハンガーループは無いとやっぱり物足りないよね。  

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 そして上の画像左側を見てもらうと分かると思うんだけど、ヨーク部分の柄をタテ・ヨコ真っ直ぐに取る(無地の場合もやり方は同じだよ)からヨーク背中側の中心で斜めに突き合わせる事になるんだよ。そしたら右側の画像で分かる通りヨークから袖に向かってほぼ"真っ直ぐ"柄が走る事になるんだよね。実はオーダーメイドのシャツだと稀にやる仕様で"袖山合わせ"と言うんだけど、工場さんが思い切り嫌がる部分なんだよ。  

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 そして実用機能は無いけれど袖口にスリットを付けてボタンを付ける仕様も60年代くらいのシャツにはよく見られたディテールでボクのお気に入りのディテールなんだよ。ちょっとした事だけど、とってもカワイイ仕様だと思うんだよね。右側の2本針による巻き縫い縫製やガセットという「まち」を付ける仕様は、もうお約束だよね。  
 ところが「それで、そんなに手間を掛けて凝ったシャツを作っちゃって、着て分かるくらい着心地ってやっぱり全然違うの?」って仲良しの友達が聞くから、「何て事を聞くヤツだ・・」思った。「まァ、気分の問題なんだよ。」と、答えたけど。  
 本題に入る前に、読者の皆さんにちょっとお知らせね。 
 この3~4年はうちの店長の小山くんを始め、ヤング達がお店をバッチリ運営してくれているからボクは店頭にあんまり立って居なかったんだけれど、最近は新しいお客様のお顔も良く知らないし、それにどうしてもアメ横時代から培った現場好きの虫がこのところ思い切り騒いで困るので、抜けられない用事の有る時以外の「日曜日」や「祝日」に関しては、みんなの邪魔になるのを承知で出来るだけ店頭に立つ事にしたんだよ。銀行や業者さんもお休みだしね。 
 「何か一応、生きては居るみたい・・」「最近は、手を抜きまくって毎日スウェットの上下とビルケンで過ごしているらしい・・」「雑誌に出る時は昔の写真を使っているらしい・・」などと言うウワサを本当かも?と思っているかも知れないお客様と、あらためてコミュニケーションが出来たらきっと久し振りに楽しいと思うんだよね。 
 実際にボクが動いているのを見てみたいという、モノ好きな方は是非お顔を出してみて下さい。で、それでも店頭に居なかったら多分脱走して、「服」や「靴」では無く、その辺で「油」や「コビ」を売っていると思うからうちのスタッフに「さっさと、今すぐ店に戻るように!」って言ってくれるかな?走って帰るから・・・ 

「"ウクラ"って何だろうねェ・・?」 

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 若かった頃の話だよ。服好きで仲良しの友達といつものようにアメ横に行ったらね、「る~ふ」に"UCLA"って見た事の無いロゴが入ったブルーのコーチジャケットがウィンドウの横に目立つように掛けて有って何だかスゴくカッコ良かったんだよ。そして他のラックや棚には同じマークのTシャツとかサンバイザーみたいなのも売っていてね。 
 ボクは何のマークだろうと思い友達に「"ウクラ"って言うのかな?アレ、何だろうねェ・・お前、知ってる?」聞いたら「え?知らないよォ・・オレも見た事が無いし。」そしたらボク達の会話を、すぐ横でたまたま聞きつけた当時の「る~ふ」スタッフのM浦さんが「このマークは、そのままユーシーエルエーって読んで、西海岸で一番人気が有る大学のだよ。」ってコテコテの長崎訛りで教えてくれたんだよね。最初に目に入ったコーチジャケットが、かなり気にはなるけど・・と思いながら、多分その時は違うモノを買って帰ったと思うんだよね。 
 それから暫く経ってからだったのかな、雑誌"POPEYE"が創刊されているのを友達に聞いて慌てて買いに行ったんだよ。そして、その中で"UCLA"がバッチリと紹介されていて初めてその実態を知る事になったんだよね。「わァ~!スゴい・・」って本当に思ったよ。 

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 それはかなり心地良い強烈なショックでさ、こんなにカッコいい大学生活が有るんだ・・思った。それまでは、ぼんやりとしかイメージ出来なかった西海岸の大学生のライフスタイルが"POPEYE"では、カリフォルニアの太陽の下で撮られた写真と共に細かく紹介されていて、何度も見ているうちにだんだんと強い憧れを持つようになったんだよね。自分の学生生活は大失敗だったと少し後悔していた頃でも有ったからだろうなァ。
 とにかく"POPEYE"の創刊号は「メンクラ」や「チェックメイト」に飽き足りなくなった当時のアメリカ大好き少年達に形容詞が見付からないくらいショックを与え、そして様々な影響を与えたと思うんだけど、ボクの場合はスケボーやハングライダーじゃ無く"UCLA"と「スニーカー」だった。特に"UCLA"については単なる4つ並んだアルファベットが、ある種の神通力と、そして強烈な光を放ち始めた瞬間だったと思うんだよね。
 読み終わった途端にコーチジャケットの事を思い出して翌日だったかに、慌ててバイトの帰りに遠回りをして一人でアメ横に行ったらコーチジャケットは残念な事に残って居なくてね。だけど"UCLA"のロゴの付いたホワイトのジップパーカを見付けて買い、それからしばらくは#646のコーデュロイに合わせたりしてボクのかなりご自慢のアイテムになった。そしてそれからもボクのワードローブには"UCLA"のトレーナーやサイクルパック、Tシャツ等々色々なアイテムが少しずつ増えて行ったんだよね。 

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 "UCLA"の登場は丁度タイミングが良かったんだと思うんだよね。ボク達がアイビー小僧だった時には"TAKE IVY"に紹介された東のアイビーリーグの学生達の格好(ボクなんか実際に撮影された65年頃の格好を70年になってから眺めて居たワケで、そもそも情報が数年古かったんだけどね。今なら考えられないけれど当時は疑問にも思わなかった。)がお手本だったんだけど、73年くらいから本格的に時代がクラシック・アイビーから離れてどんどん西に向かい始め、西にも当然大学は有るんだろうなァと思いながらもボクは"スタンフォード"とか映画「卒業」で覚えた"カリフォルニア大学バークレー校"(ここをCALと略すのを知ったのは随分経ってからだったけど。)の名前くらいしか知らなくて、大学の名前をあんな風にアルファベットで省略するなんて知らなかったもんね。
 それに学生達の格好があんなに違うなんて思っても居なかったんだよ。特にびっくりしたのは、CONVERSEやKEDS、TOP SIDERなんかの素晴らしいスニーカーが、それこそ唸るほど存在するアメリカの大学生なのに、わざわざヨーロッパのADIDASやTRETORNを履いている事だった。
 それに今でもそうなんだけど、アメリカンカジュアルを語る際には「大学モノ」「カレッジモノ」などと言ういわゆる「ロゴ入りモノ」はマストアイテムだからね。ボクもあんなに気に入っていた「お約束」のプリンストンやダートマスなんていうロゴものから、いとも簡単に"UCLA"に移行しちゃった。
 "POPEYE"のお陰?で"UCLA"はその後一挙にカッコいいメジャーブランドとして一人歩きを始め、気が付いたらライセンス商品も既に有ったのか取り扱うお店も増え、その頃になるとアメリカンな格好をした連中の間でもずいぶんと見かけるようになって行ったんだよね。
 "UCLA"が圧倒的な人気だったけれど、他に"USC"なんかもかなり人気だった。 ちょうどその頃の「チェックメイト」で紹介されているアメ横の記事が有るんだけど、珍しくメンズファッションイラストの巨匠、斉藤融先生が全部イラストで描き上げているんだよ。ここに当時の"UCLA"人気が垣間見えるね。

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 興味深いのは「る~ふ」も「ミウラ」も"ウェストコーストショップ"って書いて有るんだよね、そういう時代だったんだなァ・・。(この年の冬にボクは「る~ふ」に入った。) 

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 また、別のページには「原宿のスケートボーダー達」というスナップ特集が有って少し抜粋してみるね。懐かしいねェ・・みんな、こんなだったよ。"USC"も"UCLA"も居るね。

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 まァ、そんな事が有って当時のアメリカかぶれ小僧だったボク達にとって"UCLA"というロゴは本当に特別だったんだよね。ボク自身も当時は流行っているからとかいう感覚じゃ無く、とにかくロゴのアルファベットの並び方とかクマ?のキャラクターがとっても可愛くて気に入っていて、実は今現在も感覚は全然変わっていないんだよね。
 だから昨年、宝島社から出た「IVY NOW&THEN」というムックを2人ともまだ高校生の時にアイビーが縁で友達になった、元POPEYE編集部の松木直也氏が制作する際にお手伝いをしたんだけど、打ち合わせの時に彼が「ちょっとUCLAが、今どうなっているのか取材して来るからさァ・・一緒にロスに行く?」と言い出した時は思わず一緒に行きたくなっちゃったもんね。

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 70年代のファッションを語る際には絶対に外せないアイコンの一つが"UCLA"だとボクは思うんだよね。だから当時のワクワク感をもう一度味わいたくて、チャンスが有ったら是非一度アメリカ製で実現したいって、ずっと思っていたんだよ。
 それに"UCLA"のロゴを形成しているブルーとイエローの組み合わせが、何ともウェスト・コーストしているよねェ?
 暖かくなって、ようやくシャツ1枚でも勝負出来る季節になったよね。そうなるとちょっとディテールの凝った主張の強いシャツなんかも着てみたくなるというか、特に今年はウェスタンシャツもボクの中ではちょっとしたリバイバルかなァ・・やっぱりアメリカの生み出したスゴくカッコいいシャツの1つだと思うんだよ。 
 去年の春頃だったかに、隣の「ミウラ」に居た仲良しの友達と飲んでいる時に、昔のウェスタンブームの話しで盛り上がって以来、ずっと気になっていてね。特にウェスタンシャツというアイテムは程良く味の出ているデニムや穿き込んだカーキパンツ、BDUファティーグパンツなどと合わせると、黙っていてもそれだけでアメリカの香りがするというか、個人的には昔から大好きなシャツなんだよ。Gジャンやジップパーカにもバッチリ合うしね。 
 余暇を見付けてやっているバンドでもGIBSONのアコースティック・ギターを持つ時にはウェスタンシャツを着てデニムを穿けば、やっぱりそれだけでアメリカンな音楽をやっているという景色になるし、それに絶対カッコいいよなァ・・なんて思って去年の夏のライブはWRANGLERのチェックのウェスタンシャツを着て、そしてちょっとキツいけどLEVI'Sの#646デニムを穿いて出てみた。(あ、別にカントリー&ウェスタンを演るワケじゃ無いし、ウェスタンブーツを履いたりもしないんだけどね。) 
 やっぱり仕事が洋服屋だから何はさておき、どうしても型から入っちゃうんだよ。(苦笑)  肝心の腕前?・・上手だったら洋服屋なんかやっていないよ。と、言いながら割りと狙ったつもりのボクのその日のスタイリングは、実は誰にもウケなかったし話題にもしてもらえなかった・・要するに、スベったんだよ。その日ライブハウスに居たのは、ほとんどがセレクト業界のヒト達だったにもかかわらず・・だよ。まァ、現実なんてそんなもんだよねェ。 
 だけど考えてみたらウェスタンスタイルって不思議なデザインも多いけど、完成度の高いスタイルだよね?ちゃんとルールやディテールの基本が決まっていて、アタマのてっぺん(ハット)から、つま先(ブーツ)までトータルにコーディネートが出来るんだもんね。おまけにそのルールに基づいて労働着や普段着から正装、そしてステージ衣装みたいなモノまでちゃんと揃っているし・・何だかスゴい世界観だと思わない? 
 下の画像は65年のSEARSのカタログからだけど、半世紀前に既に通信販売でこんなのを全米に向けて売っていたんだよ。やっぱりスケールが違うよね。 
 子供達向けのウェスタン・ウェアもカワイイもんね・・勿論ウェスタンブーツのページも有るんだけど紙がボロボロに破けていて写真にならなかったよ。(苦笑) 

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 そして本場だから、当然のようにウェスタンシャツの本までちゃんと出ているんだよ。表紙のシャツは"ROCK MOUNT"だね。 

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 そもそも"WESTERN"(ウェスタン)と言うのはアメリカの東部から見て「西部」という事だろうから、ヨーロッパから東海岸に上陸した移民達が更に西方を目指した開拓時代に培われた独特の西部様式がウェアとしても生活や環境に応じて独自に進化した結果なんだろうね。 
 そしてその開拓時代を題材にした様々な物語が、やっぱり「西部劇」(ウェスタン)って呼ぶもんね。さしずめ日本で言えばウェスタン=西方→関西風だとすれば「吉本新喜劇」も西部劇って事になるのかなァ・・・ってな事は無いと思うけれど、ただ確かに勧善懲悪という典型的なストーリー建ては、どこか似ているかも知れないと思う事が時々有るよ。 
 それに、何よりも"ウェスタン!"という言葉の響きがボク達世代には多分、子供の頃から憧れていたアメリカを強く感じさせる一つのキーワードとして、少なくとも今の若い人達よりは数段カッコ良く聞こえてしまうのかも知れないなァと、実は最近思っているんだよね。 
 ボクが子供の頃は、それこそ国策?による当時のアメリカ文化の洗脳教育のひとつとして毎日どこかのチャンネルで必ず西部劇が放映されていたから50年代生まれの男で「ローハイド」や「ララミー牧場」「ローン・レンジャー」といった西部劇を知らないというヒトは恐らくほとんど居ないと思うんだよ。 

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 ボクだって小学校に入る前から本来の言葉の意味も知らないのにカッコいいカウボーイになりたいと思い、おもちゃのガンベルトを買ってもらって早撃ちをやってみたり先住民族(インディアン)の人達の仕草を真似たり、従兄弟に投げ縄を作ってもらって2人で隣りの家の犬を追い回して試してみたりね。 
 またウィンチェスターというライフルやコルトの二丁拳銃なんていう言葉なんかもガキのクセに知っていたし、更にはドラマだけでは無く、マンガだって「早撃ちマック」だとか、名前が分からないんだけどバッグス・バニー・ショーに出て来るガンマンだとかがちゃんと記憶に有るもんね。 

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 それに音楽だって戦後のカッコいいアメリカの音楽は最初ジャズとウェスタンしか無かったところにエルビスの登場をルーツとするロカビリーという騒々しいけどワクワクするような若者向けの音楽が出て来た・・と、昔母親が言っていた。そして昭和30年代には有楽町駅前の日本劇場で「日劇ウェスタンカーニバル」と名付けた、今で言うジャニーズのイベントのようなのが始まって、看板こそウェスタンなんだけどロカビリー3人男なんていうのが大変な人気で若い女のコが悲鳴を上げて騒ぎまくっていたという事なんだよね。ところが、うちの母親はその頃すでに30を過ぎていたにもかかわらずミッキー・カーチスの大ファンで、その頃うちの家ではテレビに彼が出て来ると全ての家事のオペレーションが止まるというシステムになっていた。 

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 上の写真、左側が「ロカビリー3人男」で真ん中、そして右側の写真がミッキー・カーチスだよ。 
 そう言えば当時、隣りの家の一番上のお姉さんの友達が大変なロカビリー狂で、家出までして「日劇ウェスタンカーニバル」に行ったとか、京都駅で補導されたとかいうウワサまで有ったからね。今も昔もそういう事は基本的にはあんまり変わらないなと思う。 
 まァ、そんな事も有り70年代にブームが訪れた時、西部劇を見て育ちウェスタンという言葉にカッコいいアメリカを強烈に感じて来た50年代生まれの連中は既に10代半ばから20代だから、特に服好きなヤツは憧れのカッコいいカウボーイスタイルをルーツに持つ新しいアメリカンスタイルとしてウェスタンシャツやバンダナ、そしてLEVI'S等の本格的なジーンズの登場を結構ストレートに大喜びで受け止めたヒトは多かったんじゃないのかなァ・・と思うんだけど。少なくともボクの場合はそうだったし。 
 最近、若い業者さんから「ウェスタンシャツって昔、流行った事も有るんですか?」って聞かれた事が有って、確かにウェスタンシャツそのものやそれっぽいテイストは周期的に出現する事は有るけれど70年代の大ヒット以来、確かにブームという程大きく話題になった事は一度も無かったんじゃ無いかな?なんて思う。 
 ボクの記憶の中で本場アメリカ製のウェスタンシャツが登場し始めたのは、ニュートラだとかニュー・アメリカンなんていう、それまでのアイビーやトラッドが大きく変化し始めた73年くらいからだったと思うんだよね。それまでは何だか分からないまま偶然持っていたVANの赤白ギンガムのウェスタンシャツをクルーカットのままホワイトジーンズに合わせて着たりはしていたけど、段々とアイビースタイルを否定し髪を伸ばし始めたボクが真っ先に買ったFARAHのホップサックや#646のデニムに合わせる為に三宮高架下の確か"RED"というショップでアメリカ製の"H BAR C"というブランドのカラシ色のチェックのウェスタンシャツを買ったのが丁度その頃だったと思うんだよ。 

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 ただ、その頃ウェスタンシャツはまだまだ新しい潮流のニュー・アメリカンスタイルを気取る数少ない尖った連中の着るモノで、およそ一般的な認知はされていなかったし、ボクも実際は着こなしが、今ひとつ良く分からないから#646のデニムを穿いて靴はCONVERSEのスエードなんかを合わせていた。 
 それが1年ほど経ったら国内のメーカーも新しいスタイルとして、ウェスタンシャツを作り始め、気が付いたらあちらこちらで見かけるようになり、折からの「ジーンズブーム」と共にジーンズに合うシャツとして76年くらいには本当に流行っていたと思うんだよね。 
 そしてその後ボクが入った「る~ふ」でも77年くらいまではサーフブランドに混じって"H BAR C"や"ELY""MAVERICK""LEVI'S"辺りのウェスタンシャツが入荷していた。 

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 それが突如流れが変化し、新しく訪れたのが、アイビーのリバイバル・・いわゆるプレッピー・スタイルの到来だったんだよね。扱うシャツは"SERO"や"HOLBROOK"そして追いかけるように"GORDON"や"GITMAN"というボタンダウンシャツのブランドばかりになって、ウェスタンシャツは完全に終わったと思ったし、気に入っていた何枚かは後輩の手に渡っちゃった。 
 ところが、日本ではプレッピー真っ盛りだ!などと騒いでいる最中の80年くらいだったかな?今度はアメリカでウェスタンスタイルのリバイバルが有りRALPH LAURENが発表した"POLO WESTERN"が登場したんだよね。 

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 先輩が発注していて入荷して来た時には正直「え~?マジ・・また今頃ウェスタンなの?」なんて思った。記憶がちょっと曖昧だけど先輩の話しでは"GAP"が実は生産をしていて、アメリカ都市部のスノッブな連中が今コレに飛び付いているというような事だった。結構その時は売れたような気もするけどそんなに長く続かなかったのかな?そしてその後RALPH LAURENは80年代の終わり頃に今度は"POLO COUNTRY"というのを発表し、そこでまたボクはウェスタンシャツを何枚か買うハメになってしまったんだよね。 

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 そしてそんな頃か、もう少し後だったかも知れないけど何度かラスベガスで開催していたウェスタン・ウェアのトレードショーに行った事が有って、そこで知り合いのセールスマンがもっと大きい規模のウェスタン・ショーがコロラド州のデンバーでやっていて、そちらにも行った方が良いって言うから思い切って行ってみた事が有るんだよね。そして、そこでたまたま見つけたのがテキサスにある"SCHAEFER"だったんだよ。 
 だから、今回ちょっと懐かしく思い出した事も有って久し振りに"SCHAEFER"のシャツの他にジャケットやボトムス、ベルトなんかも少し導入してみたよ。やっぱりスゴくカッコいいんだよ・・・それに、今なお全部がまだアメリカ製なんだよ! 

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 まァ、そんなこんなで今うちのお店には自分だけで盛り上がって作っちゃったオリジナルも含め、気が付いたら様々なウェスタンシャツが揃っていて壮観だよ。 
 一度、試してみようかな?って思うヒトは是非・・・絶対にカッコいいと思うよ。という事で、今年のボクはボタンダウンシャツの出番がちょっと減るかも知れないなァと、今思っているんだよ。




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当店取り扱いのウェスタンシャツはこちらからご覧いただけます。
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