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第121回「久々に、ウェスタンシャツを考えてみる・・」

 暖かくなって、ようやくシャツ1枚でも勝負出来る季節になったよね。そうなるとちょっとディテールの凝った主張の強いシャツなんかも着てみたくなるというか、特に今年はウェスタンシャツもボクの中ではちょっとしたリバイバルかなァ・・やっぱりアメリカの生み出したスゴくカッコいいシャツの1つだと思うんだよ。 
 去年の春頃だったかに、隣の「ミウラ」に居た仲良しの友達と飲んでいる時に、昔のウェスタンブームの話しで盛り上がって以来、ずっと気になっていてね。特にウェスタンシャツというアイテムは程良く味の出ているデニムや穿き込んだカーキパンツ、BDUファティーグパンツなどと合わせると、黙っていてもそれだけでアメリカの香りがするというか、個人的には昔から大好きなシャツなんだよ。Gジャンやジップパーカにもバッチリ合うしね。 
 余暇を見付けてやっているバンドでもGIBSONのアコースティック・ギターを持つ時にはウェスタンシャツを着てデニムを穿けば、やっぱりそれだけでアメリカンな音楽をやっているという景色になるし、それに絶対カッコいいよなァ・・なんて思って去年の夏のライブはWRANGLERのチェックのウェスタンシャツを着て、そしてちょっとキツいけどLEVI'Sの#646デニムを穿いて出てみた。(あ、別にカントリー&ウェスタンを演るワケじゃ無いし、ウェスタンブーツを履いたりもしないんだけどね。) 
 やっぱり仕事が洋服屋だから何はさておき、どうしても型から入っちゃうんだよ。(苦笑)  肝心の腕前?・・上手だったら洋服屋なんかやっていないよ。と、言いながら割りと狙ったつもりのボクのその日のスタイリングは、実は誰にもウケなかったし話題にもしてもらえなかった・・要するに、スベったんだよ。その日ライブハウスに居たのは、ほとんどがセレクト業界のヒト達だったにもかかわらず・・だよ。まァ、現実なんてそんなもんだよねェ。 
 だけど考えてみたらウェスタンスタイルって不思議なデザインも多いけど、完成度の高いスタイルだよね?ちゃんとルールやディテールの基本が決まっていて、アタマのてっぺん(ハット)から、つま先(ブーツ)までトータルにコーディネートが出来るんだもんね。おまけにそのルールに基づいて労働着や普段着から正装、そしてステージ衣装みたいなモノまでちゃんと揃っているし・・何だかスゴい世界観だと思わない? 
 下の画像は65年のSEARSのカタログからだけど、半世紀前に既に通信販売でこんなのを全米に向けて売っていたんだよ。やっぱりスケールが違うよね。 
 子供達向けのウェスタン・ウェアもカワイイもんね・・勿論ウェスタンブーツのページも有るんだけど紙がボロボロに破けていて写真にならなかったよ。(苦笑) 

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 そして本場だから、当然のようにウェスタンシャツの本までちゃんと出ているんだよ。表紙のシャツは"ROCK MOUNT"だね。 

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 そもそも"WESTERN"(ウェスタン)と言うのはアメリカの東部から見て「西部」という事だろうから、ヨーロッパから東海岸に上陸した移民達が更に西方を目指した開拓時代に培われた独特の西部様式がウェアとしても生活や環境に応じて独自に進化した結果なんだろうね。 
 そしてその開拓時代を題材にした様々な物語が、やっぱり「西部劇」(ウェスタン)って呼ぶもんね。さしずめ日本で言えばウェスタン=西方→関西風だとすれば「吉本新喜劇」も西部劇って事になるのかなァ・・・ってな事は無いと思うけれど、ただ確かに勧善懲悪という典型的なストーリー建ては、どこか似ているかも知れないと思う事が時々有るよ。 
 それに、何よりも"ウェスタン!"という言葉の響きがボク達世代には多分、子供の頃から憧れていたアメリカを強く感じさせる一つのキーワードとして、少なくとも今の若い人達よりは数段カッコ良く聞こえてしまうのかも知れないなァと、実は最近思っているんだよね。 
 ボクが子供の頃は、それこそ国策?による当時のアメリカ文化の洗脳教育のひとつとして毎日どこかのチャンネルで必ず西部劇が放映されていたから50年代生まれの男で「ローハイド」や「ララミー牧場」「ローン・レンジャー」といった西部劇を知らないというヒトは恐らくほとんど居ないと思うんだよ。 

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 ボクだって小学校に入る前から本来の言葉の意味も知らないのにカッコいいカウボーイになりたいと思い、おもちゃのガンベルトを買ってもらって早撃ちをやってみたり先住民族(インディアン)の人達の仕草を真似たり、従兄弟に投げ縄を作ってもらって2人で隣りの家の犬を追い回して試してみたりね。 
 またウィンチェスターというライフルやコルトの二丁拳銃なんていう言葉なんかもガキのクセに知っていたし、更にはドラマだけでは無く、マンガだって「早撃ちマック」だとか、名前が分からないんだけどバッグス・バニー・ショーに出て来るガンマンだとかがちゃんと記憶に有るもんね。 

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 それに音楽だって戦後のカッコいいアメリカの音楽は最初ジャズとウェスタンしか無かったところにエルビスの登場をルーツとするロカビリーという騒々しいけどワクワクするような若者向けの音楽が出て来た・・と、昔母親が言っていた。そして昭和30年代には有楽町駅前の日本劇場で「日劇ウェスタンカーニバル」と名付けた、今で言うジャニーズのイベントのようなのが始まって、看板こそウェスタンなんだけどロカビリー3人男なんていうのが大変な人気で若い女のコが悲鳴を上げて騒ぎまくっていたという事なんだよね。ところが、うちの母親はその頃すでに30を過ぎていたにもかかわらずミッキー・カーチスの大ファンで、その頃うちの家ではテレビに彼が出て来ると全ての家事のオペレーションが止まるというシステムになっていた。 

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 上の写真、左側が「ロカビリー3人男」で真ん中、そして右側の写真がミッキー・カーチスだよ。 
 そう言えば当時、隣りの家の一番上のお姉さんの友達が大変なロカビリー狂で、家出までして「日劇ウェスタンカーニバル」に行ったとか、京都駅で補導されたとかいうウワサまで有ったからね。今も昔もそういう事は基本的にはあんまり変わらないなと思う。 
 まァ、そんな事も有り70年代にブームが訪れた時、西部劇を見て育ちウェスタンという言葉にカッコいいアメリカを強烈に感じて来た50年代生まれの連中は既に10代半ばから20代だから、特に服好きなヤツは憧れのカッコいいカウボーイスタイルをルーツに持つ新しいアメリカンスタイルとしてウェスタンシャツやバンダナ、そしてLEVI'S等の本格的なジーンズの登場を結構ストレートに大喜びで受け止めたヒトは多かったんじゃないのかなァ・・と思うんだけど。少なくともボクの場合はそうだったし。 
 最近、若い業者さんから「ウェスタンシャツって昔、流行った事も有るんですか?」って聞かれた事が有って、確かにウェスタンシャツそのものやそれっぽいテイストは周期的に出現する事は有るけれど70年代の大ヒット以来、確かにブームという程大きく話題になった事は一度も無かったんじゃ無いかな?なんて思う。 
 ボクの記憶の中で本場アメリカ製のウェスタンシャツが登場し始めたのは、ニュートラだとかニュー・アメリカンなんていう、それまでのアイビーやトラッドが大きく変化し始めた73年くらいからだったと思うんだよね。それまでは何だか分からないまま偶然持っていたVANの赤白ギンガムのウェスタンシャツをクルーカットのままホワイトジーンズに合わせて着たりはしていたけど、段々とアイビースタイルを否定し髪を伸ばし始めたボクが真っ先に買ったFARAHのホップサックや#646のデニムに合わせる為に三宮高架下の確か"RED"というショップでアメリカ製の"H BAR C"というブランドのカラシ色のチェックのウェスタンシャツを買ったのが丁度その頃だったと思うんだよ。 

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 ただ、その頃ウェスタンシャツはまだまだ新しい潮流のニュー・アメリカンスタイルを気取る数少ない尖った連中の着るモノで、およそ一般的な認知はされていなかったし、ボクも実際は着こなしが、今ひとつ良く分からないから#646のデニムを穿いて靴はCONVERSEのスエードなんかを合わせていた。 
 それが1年ほど経ったら国内のメーカーも新しいスタイルとして、ウェスタンシャツを作り始め、気が付いたらあちらこちらで見かけるようになり、折からの「ジーンズブーム」と共にジーンズに合うシャツとして76年くらいには本当に流行っていたと思うんだよね。 
 そしてその後ボクが入った「る~ふ」でも77年くらいまではサーフブランドに混じって"H BAR C"や"ELY""MAVERICK""LEVI'S"辺りのウェスタンシャツが入荷していた。 

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 それが突如流れが変化し、新しく訪れたのが、アイビーのリバイバル・・いわゆるプレッピー・スタイルの到来だったんだよね。扱うシャツは"SERO"や"HOLBROOK"そして追いかけるように"GORDON"や"GITMAN"というボタンダウンシャツのブランドばかりになって、ウェスタンシャツは完全に終わったと思ったし、気に入っていた何枚かは後輩の手に渡っちゃった。 
 ところが、日本ではプレッピー真っ盛りだ!などと騒いでいる最中の80年くらいだったかな?今度はアメリカでウェスタンスタイルのリバイバルが有りRALPH LAURENが発表した"POLO WESTERN"が登場したんだよね。 

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 先輩が発注していて入荷して来た時には正直「え~?マジ・・また今頃ウェスタンなの?」なんて思った。記憶がちょっと曖昧だけど先輩の話しでは"GAP"が実は生産をしていて、アメリカ都市部のスノッブな連中が今コレに飛び付いているというような事だった。結構その時は売れたような気もするけどそんなに長く続かなかったのかな?そしてその後RALPH LAURENは80年代の終わり頃に今度は"POLO COUNTRY"というのを発表し、そこでまたボクはウェスタンシャツを何枚か買うハメになってしまったんだよね。 

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 そしてそんな頃か、もう少し後だったかも知れないけど何度かラスベガスで開催していたウェスタン・ウェアのトレードショーに行った事が有って、そこで知り合いのセールスマンがもっと大きい規模のウェスタン・ショーがコロラド州のデンバーでやっていて、そちらにも行った方が良いって言うから思い切って行ってみた事が有るんだよね。そして、そこでたまたま見つけたのがテキサスにある"SCHAEFER"だったんだよ。 
 だから、今回ちょっと懐かしく思い出した事も有って久し振りに"SCHAEFER"のシャツの他にジャケットやボトムス、ベルトなんかも少し導入してみたよ。やっぱりスゴくカッコいいんだよ・・・それに、今なお全部がまだアメリカ製なんだよ! 

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 まァ、そんなこんなで今うちのお店には自分だけで盛り上がって作っちゃったオリジナルも含め、気が付いたら様々なウェスタンシャツが揃っていて壮観だよ。 
 一度、試してみようかな?って思うヒトは是非・・・絶対にカッコいいと思うよ。という事で、今年のボクはボタンダウンシャツの出番がちょっと減るかも知れないなァと、今思っているんだよ。




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