本題に入る前に、読者の皆さんにちょっとお知らせね。
この3~4年はうちの店長の小山くんを始め、ヤング達がお店をバッチリ運営してくれているからボクは店頭にあんまり立って居なかったんだけれど、最近は新しいお客様のお顔も良く知らないし、それにどうしてもアメ横時代から培った現場好きの虫がこのところ思い切り騒いで困るので、抜けられない用事の有る時以外の「日曜日」や「祝日」に関しては、みんなの邪魔になるのを承知で出来るだけ店頭に立つ事にしたんだよ。銀行や業者さんもお休みだしね。
「何か一応、生きては居るみたい・・」「最近は、手を抜きまくって毎日スウェットの上下とビルケンで過ごしているらしい・・」「雑誌に出る時は昔の写真を使っているらしい・・」などと言うウワサを本当かも?と思っているかも知れないお客様と、あらためてコミュニケーションが出来たらきっと久し振りに楽しいと思うんだよね。
実際にボクが動いているのを見てみたいという、モノ好きな方は是非お顔を出してみて下さい。で、それでも店頭に居なかったら多分脱走して、「服」や「靴」では無く、その辺で「油」や「コビ」を売っていると思うからうちのスタッフに「さっさと、今すぐ店に戻るように!」って言ってくれるかな?走って帰るから・・・
「"ウクラ"って何だろうねェ・・?」
若かった頃の話だよ。服好きで仲良しの友達といつものようにアメ横に行ったらね、「る~ふ」に"UCLA"って見た事の無いロゴが入ったブルーのコーチジャケットがウィンドウの横に目立つように掛けて有って何だかスゴくカッコ良かったんだよ。そして他のラックや棚には同じマークのTシャツとかサンバイザーみたいなのも売っていてね。
ボクは何のマークだろうと思い友達に「"ウクラ"って言うのかな?アレ、何だろうねェ・・お前、知ってる?」聞いたら「え?知らないよォ・・オレも見た事が無いし。」そしたらボク達の会話を、すぐ横でたまたま聞きつけた当時の「る~ふ」スタッフのM浦さんが「このマークは、そのままユーシーエルエーって読んで、西海岸で一番人気が有る大学のだよ。」ってコテコテの長崎訛りで教えてくれたんだよね。最初に目に入ったコーチジャケットが、かなり気にはなるけど・・と思いながら、多分その時は違うモノを買って帰ったと思うんだよね。
それから暫く経ってからだったのかな、雑誌"POPEYE"が創刊されているのを友達に聞いて慌てて買いに行ったんだよ。そして、その中で"UCLA"がバッチリと紹介されていて初めてその実態を知る事になったんだよね。「わァ~!スゴい・・」って本当に思ったよ。
それはかなり心地良い強烈なショックでさ、こんなにカッコいい大学生活が有るんだ・・思った。それまでは、ぼんやりとしかイメージ出来なかった西海岸の大学生のライフスタイルが"POPEYE"では、カリフォルニアの太陽の下で撮られた写真と共に細かく紹介されていて、何度も見ているうちにだんだんと強い憧れを持つようになったんだよね。自分の学生生活は大失敗だったと少し後悔していた頃でも有ったからだろうなァ。
とにかく"POPEYE"の創刊号は「メンクラ」や「チェックメイト」に飽き足りなくなった当時のアメリカ大好き少年達に形容詞が見付からないくらいショックを与え、そして様々な影響を与えたと思うんだけど、ボクの場合はスケボーやハングライダーじゃ無く"UCLA"と「スニーカー」だった。特に"UCLA"については単なる4つ並んだアルファベットが、ある種の神通力と、そして強烈な光を放ち始めた瞬間だったと思うんだよね。
読み終わった途端にコーチジャケットの事を思い出して翌日だったかに、慌ててバイトの帰りに遠回りをして一人でアメ横に行ったらコーチジャケットは残念な事に残って居なくてね。だけど"UCLA"のロゴの付いたホワイトのジップパーカを見付けて買い、それからしばらくは#646のコーデュロイに合わせたりしてボクのかなりご自慢のアイテムになった。そしてそれからもボクのワードローブには"UCLA"のトレーナーやサイクルパック、Tシャツ等々色々なアイテムが少しずつ増えて行ったんだよね。
"UCLA"の登場は丁度タイミングが良かったんだと思うんだよね。ボク達がアイビー小僧だった時には"TAKE IVY"に紹介された東のアイビーリーグの学生達の格好(ボクなんか実際に撮影された65年頃の格好を70年になってから眺めて居たワケで、そもそも情報が数年古かったんだけどね。今なら考えられないけれど当時は疑問にも思わなかった。)がお手本だったんだけど、73年くらいから本格的に時代がクラシック・アイビーから離れてどんどん西に向かい始め、西にも当然大学は有るんだろうなァと思いながらもボクは"スタンフォード"とか映画「卒業」で覚えた"カリフォルニア大学バークレー校"(ここをCALと略すのを知ったのは随分経ってからだったけど。)の名前くらいしか知らなくて、大学の名前をあんな風にアルファベットで省略するなんて知らなかったもんね。
それに学生達の格好があんなに違うなんて思っても居なかったんだよ。特にびっくりしたのは、CONVERSEやKEDS、TOP SIDERなんかの素晴らしいスニーカーが、それこそ唸るほど存在するアメリカの大学生なのに、わざわざヨーロッパのADIDASやTRETORNを履いている事だった。
それに今でもそうなんだけど、アメリカンカジュアルを語る際には「大学モノ」「カレッジモノ」などと言ういわゆる「ロゴ入りモノ」はマストアイテムだからね。ボクもあんなに気に入っていた「お約束」のプリンストンやダートマスなんていうロゴものから、いとも簡単に"UCLA"に移行しちゃった。
"POPEYE"のお陰?で"UCLA"はその後一挙にカッコいいメジャーブランドとして一人歩きを始め、気が付いたらライセンス商品も既に有ったのか取り扱うお店も増え、その頃になるとアメリカンな格好をした連中の間でもずいぶんと見かけるようになって行ったんだよね。
"UCLA"が圧倒的な人気だったけれど、他に"USC"なんかもかなり人気だった。
ちょうどその頃の「チェックメイト」で紹介されているアメ横の記事が有るんだけど、珍しくメンズファッションイラストの巨匠、斉藤融先生が全部イラストで描き上げているんだよ。ここに当時の"UCLA"人気が垣間見えるね。
興味深いのは「る~ふ」も「ミウラ」も"ウェストコーストショップ"って書いて有るんだよね、そういう時代だったんだなァ・・。(この年の冬にボクは「る~ふ」に入った。)
また、別のページには「原宿のスケートボーダー達」というスナップ特集が有って少し抜粋してみるね。懐かしいねェ・・みんな、こんなだったよ。"USC"も"UCLA"も居るね。
まァ、そんな事が有って当時のアメリカかぶれ小僧だったボク達にとって"UCLA"というロゴは本当に特別だったんだよね。ボク自身も当時は流行っているからとかいう感覚じゃ無く、とにかくロゴのアルファベットの並び方とかクマ?のキャラクターがとっても可愛くて気に入っていて、実は今現在も感覚は全然変わっていないんだよね。
だから昨年、宝島社から出た「IVY NOW&THEN」というムックを2人ともまだ高校生の時にアイビーが縁で友達になった、元POPEYE編集部の松木直也氏が制作する際にお手伝いをしたんだけど、打ち合わせの時に彼が「ちょっとUCLAが、今どうなっているのか取材して来るからさァ・・一緒にロスに行く?」と言い出した時は思わず一緒に行きたくなっちゃったもんね。
70年代のファッションを語る際には絶対に外せないアイコンの一つが"UCLA"だとボクは思うんだよね。だから当時のワクワク感をもう一度味わいたくて、チャンスが有ったら是非一度アメリカ製で実現したいって、ずっと思っていたんだよ。
それに"UCLA"のロゴを形成しているブルーとイエローの組み合わせが、何ともウェスト・コーストしているよねェ?