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第3回 「30年ぶりのトップサイダー、滑らない話」

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 このところ夏になってくるとまたまたまたプレッピーブームのおかげで、またまたまたデッキシューズが人気のようである。うんうん、よしよし、いいことだ、いいことだ。 でもさー、「デッキシューズのド定番」とかなんとかいっちゃって雑誌に紹介されたり、セレクトショツプなんかに並んでるのはパラブーツのやつなんだよなぁ。フントニモー、いったいいつからパラブーツのデッキシューズがド定番ということになってしまったのだ。違うだろそれ。パラブーツといったら、デッキシューズでなくてシャンボールだろ。ウエストンのゴルフが高くて買えなかったら代わりに履く靴で、オレもゴルフが買えなかった頃によく代わりに雨の日に履いたもんだよ。
デッキシュースのド定番といったらば、昔も今も「トップサイダー」でしょうにぃ〜。なんやらバンドオブアウトサイダーズがコラボしてるらしいけど、あれはダメ。別モノね。やっぱトップサイダーといったら、レザーのデッキモカもいいけど、ピーナッツトゥのキャンバスオックスフォードだがや。色は白にするか、紺にするかで迷うところ。どっちもすてがたいんだよね〜。 ちなみにオレが初めてトップサイダーを買ったのは高校2年のとき、白のキャンバスオックスフォード。あまりに美しすぎて汚すのがもったいなくて、学校に履いていったりしなかったね。そしたら1こ下の後輩のサッカー部のやつが同じのをカカトを踏んで履いてやがって「こんないい靴をなんつう履き方すんだ!」って、めったに怒らない温厚なオレがイカったわけ。よっぽどコワかったらしい。
昔、東京でバッタリ再会したら、そいつは青山のコムデギャルソンの店員になっていた。「自分、今でも覚えてますっス、いでさんにトップサイダーのカカトを踏んで履いていて怒られたのを」だって。
ええ話やなぁ〜。あの時のいで先輩の教えが効いたのか、最近のコムデギャルソンはラコステやブルックスやセントジェームスなんかとコラボしていて、ちょっと「お、欲しいかも」と思ってしまう。以前、TUBEの斉藤さんにその話をしたら、なんでもジュンヤワタナベってのはいつもチノパンにBDシャツのアメカジくんなんだってさ。あーねー、それでか。 で、話はトップサイダーに戻るんだけど、その後メイドインチャイナになっちゃってさ、ヘンチクリンなヨットの帆みたいなロゴになっちゃってさ、オレはもうトップサイダーとはあれから何十年も決別した夏を送っていた。
そしたらこないだセプティズを覗いたら、玉木店長がいいカンジに色褪せた紺のキャンバスオックスフォードのトップサイダーを履いていたのだ。
マリンブルーの半袖のスウェットに、ブルーのヒッコリーストライプのカーペンターパンツで、紺のトップサイダー。  いいじゃないの〜、爽やかで。ニートなシティボーイじゃん。これで正ちゃん帽でも被れば80年代の青学のテニス部じゃん。
でも、半袖スゥットもカーペンターパンツもいまどきのサイジングってところが昔のニートなシティホーイとはちょっと違うけど。
変わっていないのはトップサイダーだけ。しかもカカトを見たらロゴはちゃんと昔の雲がモクモクしたやつに戻ってるじゃないのよ。一時期、もうなくなっちゃったけど渋谷にあったゴールデンチャーでこのロゴのやつの復刻版を細々と売ってたけど、最近またトップサイダーはこの雲がモクモクに戻ったらしい。思わず玉木さんに「やっぱいいよねー、これ」と言っちゃったが最後、「お店じゃなんだから、近所の喫茶店でトップサイダーについて多いに語ろうよ!」ということになってしまった。しもたぁ〜、言わなきゃよかった。こりゃあまた2時間はいくな...。

 平日の昼下がりの三茶の喫茶店。コーヒーを飲みながら40過ぎの中年オヤジが2人、何を楽しそうに話しているのかと思えばトップサイダーのこと。スペリーソールがどーしたのこーしたのって、これがホントの滑らない話である。

玉木店長「スニーカーで唯一、色が褪せてもカッコイイのは紺のトップサイダーだね」

いで「うんうん、そうそう」

玉木店長「今日の僕みたいに白いソックスをはいて履くのもまたカッコイイんだよね」

いで「うんうん、そうそう」

玉木店長「白もいいんだよね〜。美しくて。メイドインUSAの昔のを持ってんるだけど汚すのがもったいなくて箱ごとしまってるよ」

いで「うんうん、そうそう」

 しまいにゃ玉木さん、履いていたトップサイダーを喫茶店でぬいで、その場でオレに見せはじめた。これってどうなのよ?ハタから見たら...。
またオレもオレだよ。ぬぎたてのホヤホヤの湯気の出てそうな玉木店長のトップサイダーを何のためらいもなく手に持って、しげしげと眺めてるでやんの。
そうそう、トップサイダーの弱点ってさ、このカカトの中のヒールカップが履いているうちに割れてきちゃうんだよねぇ。
するとなんと玉木さんのトップサイダーは、よく見るとカカトのステッチを一度ほどいて中のヒールカップを取り除いて履いているのである。おそるべし、セプティズ玉木店長のトップサイダー愛。 結局、オレも30年ぶりに買っちったよ。紺のキャンバスオックスフォードのトップサイダー。値段が7千円ちょいと昔とさほど変わっていないのも嬉しい。
オーシ、この夏はこれを素足に履いてだね、パッチワークのクレイジーマドラスのショーツで白のラコとか爽やかに着ちゃうんだもんね。 さっそく、おろしたてを素足ではいたら、イ痛痛痛ッ......、その日のうちに両足のカカトに30年ぶりに靴ズレができてしまった。
すっかり忘れてた、キャンバスのトップサイダーって最初は靴下をはいて履かないと靴ズレができちゃうってこと。これもまたトップサイダー愛。オ〜ロオロオロオロナイン。

文 いであつし/イラスト 綿谷

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