要するに、思い込みの激しい年寄りのワガママなんだよね。

要するに、思い込みの激しい年寄りのワガママなんだよね。

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 画像のモノは30年ほど前に守屋商店で2本(3本だったかな?)まとめて大人買いをして、とても気に入っていたピケ素材のLEVI’Sのホワイトジーンズなんだよね。だけど残念な事に2~3年ほどヘビロテで穿いていて、その後アメリカへ行った時に大好きなハンバーガーとピザとドーナツとコーラのせいで太っちゃったからそれ以来ウェストのボタンが止められないままなんだよね。ジッパーも半分くらいしか上がらないし。(悲)だから帰国してからも大きめのサイズがどこかに残っていないかアメ横や渋谷を探してもみたんだけど同じモノに巡り会う事は一度も無かったよ。

 だけど、そのうちに痩せる事もきっとあるよね~、だから取って置こうっと!なんて超お気楽な甘い事を夢見ながら手元に残していたら、その後行方不明になってすっかり忘れていてね。それで気が付いたらとうとう今になっちゃってた。何やってんだかねェ・・そんなに穿きたければさっさと痩せればいいじゃん・・言うのは簡単だけどね。まァ、結果的に穿けずじまいで今に至ったという事なんだよ。本当に残念だったね・・ってカンジだ。

 このホワイトジーンズは85年か86年くらいだったのかな?LEVI’Sの復刻アイテムが未熟ながらも、ようやく少しずつ世の中に登場し始めた頃に発売されたモノで、別に昔のアーカイブに存在したアイテムでは無いと思うんだけどね。だけど、仮に「作っちゃいましたアイテム」だとしてもボクはとにかく昔からホワイトジーンズが何よりも大好きで、おまけに元アイビー小僧としては3度のゴハンより好きな尾錠付きと来れば、これはもう大人買いしか無いでしょ!ってなもんだった。

 その前に、ちょうど「る~ふ」に入る直前の76年頃だったか年が明けていたのかな?にLEVI’SのMOVING’ ONっていうシリーズでBUCKLE BACKという尾錠付きのフレアパンツが一度発売されていてね。大井町の「みどりや」でライトオンスのウォッシュデニムとカーキツイルのモノを買ったんだけど、それはどこかに行っちゃった。後輩に譲ったような気がするなァ・・。ただサンドカラーのピケは無かったんだけどね。

 上のピケのパンツは確か#201という品番が付いていたと思うんだけど、ちょっと怪しそうに見えると言うか何だかテレくさいからウェスト部分のパッチは外しちゃったんだけどね。当時このシリーズで同じピケ素材のオーバーサイズシルエットの1st.ジャケットなんかも発売されていてね。当然バックにシンチベルトが付いていたからコレも欲しいなと思い試着させてもらったら、ちょっと大きいサイズしか残っていなかったのかなァ・・サイズ感がガバガバで、さすがにコイツは断念したんだよ。

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 一方、アイビー時代の象徴として語られる尾錠付きパンツは元々50年代のある時期から60年代中頃くらい?までにアメリカで実際にアイビーアイテムとして存在していたパンツをVANが焼き直して発売したみたいだね。61年のメンクラにその新発売の広告が掲載されていたよ。結構登場は日本でも早かったんだね。「あらゆる条件をそなえていよいよ国内販売を開始しました」なんて書いてあるよ。 

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 だけど残念な事に、そのVANの尾錠付きパンツの原体験をボクはしていないと言うか初めて尾錠付きパンツを穿いたのは、実はVANもアイビーも何だか良く分かっていなかった6年生くらいの時(67年くらいかな?)に血縁者の中で一番オシャレで遊び人だと言われていた8つほど年上の従兄弟からサイズが小さくなったからって、もらったVANのバミューダショーツだったんだよね。割りとまだ新しくてボクはとっても気に入って確か中2くらいまで穿いていたと思うんだよね。

 それで、その尾錠が付いているという他には類を見ない特別に思えるディテールが事のほか気に入っちゃってその後VANショップだとかに行って探したんだけど時既に遅しというかとっくに生産なんかしていなくて手に入れる事は出来なかったんだよ。ところが高1の頃に発売されたメンクラのアイビー特集号を見るとやっぱりアイビースタイルのアイコン・ディテールとしての尾錠が付いたパンツが紹介されているワケなんだよね。あらためてどうしても欲しくなっちゃってさ・・。

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 それで一計を案じて、たまたま弟が穿けるかも?と思ったのか母親が処分せずに取って有ったそのバミューダショーツから尾錠を外し、新しいコッパンを買って来て脚が短い分、裾上げの時に出来る端布を使ってその金具を生かし、新たに尾錠を作って取り付ける事が出来るか母親に相談をしてみたら「結構簡単に出来る」って言うんだよね。

 「やったァ~」ってなもんで、さっそく何とかお小遣いを工面してKENTのコッパンを買って来た。(その頃は何だか同じアイテムでもVANよりも少し価格の高いKENTを買う方がカッコいいと思っていたんだよ。)そしたら母親が古いバミューダショーツの尾錠を外してその布ベルト部分を器用にバラして広げ、アイロンをかけ直して簡単な型紙を引き・・・そしてめでたく憧れの尾錠付きコッパンは出来上がった。しかし余りに気に入って穿き倒した為にそのKENTのコッパンは恐ろしく短命に終わってしまったんだけどね。

 そう言えばその前に、バックルさえもっと手に入ればいっぱい尾錠付きパンツが作れると思って洋裁の仕事で母親が付き合っている材料屋さんに聞いてもらったんだけど、この手の金具はちょっと取り扱いが無い・・というような当時の話しだったんだよ。

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 その後VANからでは無くて、伊藤紫朗さんのMacBethやGQ MensWearと言うブランドからようやく尾錠付きのパンツが発売されるようになって、それらが売られているショップまで見に行ったりもしたんだけど、細かい話しがどうしても尾錠のルックスが少し細くて、そして金具も小さ目だったから実はあんまり好きになれなかったんだよね。(73年のメンクラに紹介画像が有ったよ。)

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 仕方が無いからもう一度KENTのコッパンから金具を外して次のパンツを買って来て再び移植をお願いするか・・などと考えている間に実はボクの気持ちが段々と基本的にアイビーから離れ始めていたんだよね。そう、FARAHのフレアパンツや#646のデニムを穿くようになっちゃったからね。ただホワイトジーンズは相変わらず穿き続けていたけれど、この頃から髪も伸ばし始めてガチガチのアイビーはもういいや・・と思い始めていた。

 でも、そうこう言ってもやっぱりこの年になって結局尾錠付きのパンツが基本的には大好きなんだよね、75年くらいには尾錠付きのSMITH’Sのペインターパンツを見てLeeやDEE CEEじゃ無くて、どうしてもそれが欲しくなっちゃったり、その後プレッピーと呼ばれたリバイバル・アイビー時代の少し後半頃だったけどアメリカのパンツメーカーに尾錠付きのチノパンを別注しようと古い資料や私物を持ち込んで担当者やプロダクトマネージャーを説得したりしたのも久しぶりに懐かしく思い出したよ。

 ただ、それまで尾錠付きパンツとホワイトジーンズは、自分の中でどちらも共に超お気に入りと言えどもあくまで別扱いの引き出しだったんだよね。だから守屋商店でこのLEVI’Sを見つけた時には、予想もしていなかった理想の恋人に突然出会ったような気持ちになって異常に興奮したよ。こんなのが有るんだァ!ってさ。

 あれから随分と時間が経っちゃったんだけど、たまたま2年程前に冒頭で紹介したLEVI’Sが家の中で発見されてね、それで急にまた同じモノが穿きたくなっちゃって何とか同じ仕様のホワイトジーンズが別注出来ないものかと幾つか業者さんにも相談してみたりしたんだけどすごく数量的なハードルが高くてずっと諦めていたんだよ。

 そしたらここ数年、着実に頭角を現して来ていて、その少しマニアックでツボを上手く押さえたアイテム群で知られているKEATON CHASEさんに、春頃この企画を相談してみたら意外に面白がってくれて協力してくれる事になったんだよ。まァ実際は進めて行く中でそれなりに細かい苦労も有ったんだけど、ともあれ先日ようやく、かなり満足出来る理想的な出来で入荷して来たよ。

 まァ、このアイテムについても服好きの皆さんから色々なご意見は頂く事になるだろうけど、とりあえずボクは自分のモノをまず先に確保したよ、理屈じゃ無くて本当にずっと欲しかったんだからね! 

 コレを穿くとさァ・・やっぱり尾錠を見せたいからシャツをタックインしたくなるよね。ベルトも何か新しいのが欲しくなっちゃうし・・。