超マイペースでボク達がユルユルとやっているおやじバンドがこの8月に参加した夏のライブイベントで、主催をしている先輩から本番の1ヶ月くらい前に突如「お前達、1曲予定の曲を変えて、THE BEACH BOYSの"SURFIN U.S.A♪"をやれ!」と急に言われ、「ありゃァ~マジ?もう時間無いし・・・どうすんの、コレ?急に歌詞なんか覚えられな~い!」
思いながら慌てて練習をする事になったのがきっかけで、原曲のコードや歌詞を再確認する為にこの何年間ほとんど聴いていなかったTHE BEACH BOYSのCDをゴソゴソと探し出し、ついでに他の曲もあらためて色々と聴いてみたんだよね。
だけど昔からTHE BEATLESやTHE VENTURESと同様、THE BEACH BOYSも基本的にかなり好きだったからね。久し振りにあれこれ聴いたら、やっぱりスゴく心地良かったよ。特に"PET SOUNDS"以前の初期の頃の作品が、ボクはやっぱりお気に入りみたいだ。
元々、THE BEACH BOYSの名前を知ったのは中学生の時に従兄弟からもらった、ちょっと古めの"夢のハワイ"(実は余り好きでは無かった曲で、どちらかと言うとB面の方を気に入っていた。)というドーナツ盤だったんだけど、その後夏になると時々ラジオでかかる"サーフィンUSA"や"サーファー・ガール"という曲などが気に入ってしまい、特に"サーフィンUSA"は小学生の時にTHE VENTURESによって叩き込まれた3コードのブルース・スケールを8ビートに乗せるという、あの黒船の襲来のようなゾクゾクするようなビート感に例の爽やかなコーラスを加えると言う、THE BEATLESとは、また趣の違った独特のサウンドにボクは完全にノックアウトされたんだった。
なのに、ボクの大好きだったその辺りの曲はボクが高校に入る頃になると、ちょっと古めどころか、完全にいわゆる「懐メロ」扱いで、レコード屋さんに行ってもニール・セダカやポール・アンカ、コニー・フランシス辺りのドーナツ盤と一緒に「懐かしのヒット・パレードコーナー」なんて言うエリアに押し込められているような始末だったし、中古レコード屋さんで買うと更に安かった。
アイビーファッションと音楽好きが共通項で仲良しだった友達の一人もボクがTHE BEACH BOYSと言うと「あの、変な裏声で唄うバンドでしょう?」などと半分バカにしてコミックバンドみたいに言うし、実はそいつ以外にもボクの周りに好きだと言うヤツは残念ながら居なかったんだよ。
ところが、その友達のTHE BEACH BOYSに対する評価が一変したちょっとした面白い事件が有ったんだよね。
ちょうど高3になった頃だったかに中学の頃からカーペンターズのファンだったその友達が新しくリリースされた"NOW & THEN"というLPを持ってうちにやって来て
「ねェ、"FUN FUN FUN"って、こないだお前がオレに無理やり聴かせたTHE BEACH BOYSの曲だよね?たぶんその曲を、カーペンターズが今回新しいレコードでカバーしてるんだよ!」
ボクはボクで、それまでカーペンターズって知っては居たけれど、ラジオでオンエアするヒット曲を認識している程度で、基本的にはほとんどそれ以上に興味を持った事が無かったから
「え?本当に?カーペンターズが?」
言いながら、とにかく2人で聴いてみた。
聴いてみるとやっぱりTHE BEACH BOYSの"FUN FUN FUN"のカバーで、ボクは聴き終わった途端に、
「ねェ、お前の崇拝しているお前より遥かにスゴいヒト達がTHE BEACH BOYSに敬意を表しているじゃないか・・・メドレーのトップに入れているんだよ、どう?認めて降参する?」
「分かった、分かった、もう唄声が気持ち悪いとか言わないからレコ-ド貸して!」
そしてそいつはTHE BEACH BOYSの4曲入りのコンパクト盤だとかドーナツ盤を何枚か借りて帰ったまま、なかなか返してくれなかった。そしてようやく返しに来たと思ったらボクが持って居ないTHE BEACH BOYSのLPを買ったとぬかしやがったから、今度はボクがそいつの家にそのTHE BEACH BOYSの「グレイテストヒット」とか言うベスト盤のLPを借りに行った。
そんな事が有って、その後いつ頃だったのか良く思い出せないんだけれど、レコードのライナーノーツを読んで初めて知った事が、THE BEACH BOYSは結成当初は"ペンデルトーンズ"というグループ名で、当時カリフォルニアの若い連中に大人気だったシャツのメーカー名から拝借したと書いて有ったんだよね。ボクは、
「へェ~、あのシャツね!だけど、選りに選って結構変な名前を付けたもんだねェ・・・全然イメージ湧かないや。」
そう思い、最初に想像したのは例の爽やかなアイビーを連想させる、あの有名なネイビーブルーとホワイトのボールドストライプのボタンダウンシャツだったんだよね。結果的には全然違っていた。
その後また少し月日が経ち、上京して来た頃に原宿の"シカゴ"だったかでPENDLETONの古着のウールシャツを初めて買って気に入り、そしてPENDLETONというご機嫌なウールシャツのブランド名をようやく認識をしたんだけども、ボクは基本的に鈍感なんだろうねェ・・・まだその符号の一致に気が付かなかったんだよね。
そしてようやくPENDLETONと"ペンデルトーンズ"が繋がったのは"る~ふ"の店頭でPENDLETONのシャツを畳んでいる時だったんだよね。
「何だ、そうか!そういう事か!こっちのシャツか・・・」
思わず大声が出てしまったら同僚から
「たまちゃん、どうしたんだよ・・朝からウルサイよ!」
言われてしまった。
要するに最も初期のレコジャケ等に写っている、あのチェックのウールシャツがPENDLETONだったんだよね。現在うちの店頭にも同じ柄のモノが有るけれど、色々と差し支えが有るんだろうね、THE BEACH BOYSのシャツとは言えないから"ボードシャツ"と言うアイテム名になっているんだよ。
"ボード"というのは勿論サーフボードの事なんだろうけど、商品紹介も「60年代当時、カリフォルニアのサーファー達がこぞって着用していた・・・云々」と言う事になっている。
まァ、本当はTHE BEACH BOYSがデビュー当時に画像の柄のPENDLETONをお揃いで着、そして"ペンデルトーンズ"と名乗って居たからだと言う事なんだよね。
因みにTHE BEACH BOYSのメンバーの中でサーフィンをやっていたのはドラムのデニス・ウィルソンだけだった。
そして何年か前に出版された、ティモシー・ホワイト氏の書き下ろし「ビーチ・ボーイズとカリフォルニア文化」という名著が有るのだけれど、それを読んでみるとそのような事の経緯が克明に記載されているので、謹んでここに抜粋させて頂くね。読み応えの有るとっても楽しい内容の本だったよ・・・。
・・・という事だったらしい、「へェ~!そうなんだァ・・・」ってカンジだよね。こうなると、たかがチェックのウールシャツ・・・という扱いは出来ない特別なシャツに思えて来るよ。
バンドの名前なんて、後世に残る残らないにかかわらず、結構こんなカンジで軽く決められちゃうのかも知れないね。
ここに記載が有るのが例のボールド・ストライプのボタンダウンシャツという事になるのかなァ・・・あのGANTだよ!当時は襟の後ろにボタンが付いていて、ボックスプリーツの所にハンガーループもちゃんと有るモデルだったんだろうなァ。