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第129回「やっぱカッコいいよ!・・・コーデュロイのブッシュパンツ」

 75年の秋にボクは、ちょっとイヤな事が有ったのをきっかけにテレビ局のバイトを辞めようかどうしようかと迷い始めて居た頃だったんだけど、ちょうど給料日だったんだよね。
 それで休憩時間に食堂の横に有った公衆電話からいつものように大井町の「みどりや」に電話をしてマスターに「今日帰りに寄りますけど取り置きしてもらっているのって今月は全部で幾らになりますか?」って聞いたら金額を教えてくれてね。大概端数は切ってくれるから計算式は良く分からないけれどいつも15,000円だとか18,000円だとかの丸い数字だった。 
 そして「今日あたり来るだろうと思って、お前にブシュパンを取って有るから早く来いよ。」「は~い、じゃ後で寄りまァ~す!」なんて言いながら一瞬ブシュパンって何だろうと思ったんだよね。 
 実はボクが「みどりや」やアメ横で服や靴ばかり買って毎月のように慢性金欠症に陥り、いつもお腹を空かせているのをマスターのお母さんが良く知っていて、時々お店の奥に上がり込んでは、お餅を焼いてご馳走になったり、インスタントラーメンを作ってもらったり、パンとかお煎餅をもらったり(苦笑)していたから、何かパンの種類だろうか?なんて思って「ところで何ですか?その、今マスターが言ったヤツ・・・」聞いたら「ブシュパン・・・ブッシュパンツだよ、あ、そうか・・お前知らないんだよな。一応取って有るから見に来いよ、絶対カッコいいからさ・・・」 
 そんなやり取りが有って、バイトの帰りに「みどりや」に立ち寄ったら、いつものように顔見知りの連中が店の前で2~3人集まって喋っていて、ボクを見るなり「お~、たまちゃん久し振りじゃん、それ新色のBARACUTA?相変わらず稼いでるねェ~・・・」なんてイヤミ(笑)を言われながら店内に入って行った。 
 そして、取り置きをしてもらっていたモノを受け取ってお金を払ったりしていたら奥の棚からマスターが「これ、これ・・・お前29インチだよな?」言いながら出してくれたのが初めて見るLEVI'Sの#676というコーデュロイのブッシュパンツだった。 
 当時「みどりや」には、マスターと同じ苗字のやはりSさんと言うヒトがスタッフで居て、最初は血縁関係のヒトかと思っていたら実はそうでは無かったんだけど、そのSさんがその日見ると、もう早速同じブッシュパンツを穿いているんだよね。 
 それを見たボク「ひェ~!カ、カッコいい~!欲しい~」思った瞬間に「ボクも買います!」秒殺買いをしちゃった。 
 ちょっと焼き過ぎたトーストのような金茶色のコーデュロイでフロントとバックに付いたフラップ付きのブッシュポケットに何だかやたらに新しいアメリカンテイストを強烈に感じてね。「やったァ~!」ってカンジだった。 
 記憶がちょっと曖昧だけど、そのブッシュパンツは中畝のコーデュロイで、結構タテに縮んだ気がするから、あれはコットン100%のコーデュロイだったのかも知れないね。 
 そしたら、そのLEVI'Sのブッシュパンツって恐らくアメリカでもよっぽど売れたんだよね、次の年になったらLEEやWRANGLERからも同じようなデザインが出て来たし、BIG JOHNだとかBOBSONなんかの国産のジーンズメーカーからも続々と発売されたもんね。 
    
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 画像のモノはその後#646なんかに使用していたポリエステル混紡の細畝コーデュロイに変更され、フレアがもう少し強調されると言うマイナーチェンジ?をしたモノだと思うんだけど、ボクが買った時はこの独特のデザインが直輸入モノのLEVI'Sでしか存在しなかった(と、思う)からボクは、"る~ふ"で買ったミッキーのバックルのベルトをして、これ見よがしに得意になって穿いていた。(右の画像はBIG JOHNの広告) 
 ただ、それに合わせてアメ横で見たSANTA ROSAのワークブーツが欲しかったんだけどちょっと、その時は手が出なかったからCONVERSEのスエードとかFREEMANのデザートブーツを履いたりしていたけどね。 
 そして当時トップスは、ブッシュパンツにラグジャーを着るのが圧倒的にカッコ良かったんだよ。ボクはラグジャー風?のNORMANの太ボーダーの長袖ポロやWASHINGTON DEE CEEのネルシャツ、FOX KNAPPのチェックのCPOなどを合わせていた。 
 だけど時々「ブッシュパンツにBARACUTA着るのは、ちょっとキビしくねェ?」友達から言われたりもしていたよ。 
 画像は、ボクがブッシュパンツを買った翌年に平凡パンチから出た'76年の"MEN'S CATALOG"。そうそうブッシュパンツの着こなしは、こんな感じだったよ。 

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 そもそもコーデュロイという素材は元々は、74年頃に海外で先に注目されていたみたいで、それまで日本では"コール天"と呼ばれ、アイビーの世界でも秋冬の素材として紹介されていたのが、アメリカではLEVI'S等のコーデュロイパンツを始めOPやKATINのコーデュロイのウォークショーツを西海岸やハワイでは若者が年がら年中愛用するようになり、特に細畝のコーデュロイは日本だけだと思うけど"サマー・コーデュロイ"などと無理に?名付けられ、シャツやGジャンなど様々なアイテムに一挙に広がって行ったような・・・ちょうどそんな時期だったように思うんだよね。 
 '74年のan anには、ELLEによる本場パリで注目されているコーデュロイ素材の紹介記事が掲載されたりしていて、日本ではちょっとアンテナの高い女のコを中心に広まり始めたのが男のコより先だったみたいに書いて有るよ。 

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 そして以降は、その素材の事を"コーデュロイ"と呼ぶ事が最先端のオシャレでカッコ良い事で、相変わらず"コール天"と呼ぶのはファッションに鈍感な遅れたヤツというカンジになって行ったような気がするよ。ボクも慌てて"コーデュロイ"と言い直す事にしたもんね。 
 そして、西海岸ブームの到来によって折から台頭し始めた超人気サーフブランドのひとつ、OP(OCEAN PACIFIC)からも一度ブッシュタイプがリリースされた事が有ったんだけど、それを思い出して当時のLEVI'S(下の画像)などを参考にし、代理店さんと協同で復刻してみたのが先シーズンからの当店の人気者、OPのブッシュパンツとブッシュショーツだったんだよね。 
 特にパンツのシルエットに関しては少しアップデイトさせ、今風にモデファイしたけれど、そこはやっぱりOPらしくウェストにはエラスティック(ゴム)を入れ、ムードは当時のままを出来るだけ再現してみたんだよ。 

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 上の白黒画像はOPの代理店だったJ.S.Pの77年コレクションの展示会の案内。そして真ん中の画像はその頃のOPの雑誌広告だよ。 

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 今回再入荷したOPのコーデュロイ・ブッシュパンツ・・・基本的にはいわゆる「ゴム入りイージーパンツ」みたいなもんだから、"カッコ良く楽ちん!"なのは今時風で、やっぱりこの秋もかなりポイント高いと思うんだよね。

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