夢のタイムトラベル・・・昭和のアメ横【爆買い!】ツアー

夢のタイムトラベル・・・昭和のアメ横【爆買い!】ツアー

 最近思うんだけど、昨今の復刻ブーム?のおかげで過去の名品や珍品に至るまで随分と色々なアイテムがその当時の姿で手に入るようになったよね?今は”POPEYE”の創刊号だって付録で手に入っちゃうんだから。神保町のヴィンテージ・マガジンショップ”マグニフ”のご主人が「ちょっと、複雑ですね~(苦笑)」ってさ。

 だけど、こういう状況を昔は想像出来なかったよ。まァ、正直言うと時々ちょっとだけスベっているモノも無くはないけれど、LEVI’SやLee、CONVERSE、adidasなど、その道の達人の方が監修して「あーでも無い、こーでも無い・・う~ん・・ここんとこ違うなァ、ミリ単位のニュアンスなんだよ・・もっと、こうバタ臭くならない?全体的なトーンの問題なんだよ!分からないかなァ?」とか何とか、誰も理解出来ないような会話をしながら随分エネルギーを注いだんだろうねェ・・・だけど本当にスゴい事だと思うんだよ。 

 最近でもいちいち感心しながらボクも幾つか買っちゃったもんね。 

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 ところがね、ボクなんかはそう言ったモノがある程度手に入り、満たされ始めると段々と巷の復刻アイテムくらいでは飽き足らなくなっちゃうんだよね。 

 それこそ若い頃にアメ横で見た、今となっては復刻などまさか程遠く、まして誰も話題にしないような超ニッチなマイナーアイテムを時々思い出しては「あの時、さっさと買っておけば良かったんだよなァ・・結局、あれ一度きりの遭遇だったもんねェ。」とか「後輩とトレードしたりしなきゃ良かったんだよね・・今、有ったら絶対1ダースくらい買っちゃうもんなァ。」などとボヤいていたりするもんね。 

 ボクは本当に幾つになっても懲りないヤツだと思う。 

 つい先日も、センタービルが出来る前、81年のアメ横大火災で焼失したバラックのアメ横時代を一緒に過ごした40年来の先輩とそんな楽しい話しになったんだよね。 

「もしタイムマシンで、あのバラックの頃のアメ横に行けたら先輩は、まずどこに行きます?最初は、やっぱり”ミウラ”と”る~ふ”の並んでいたあの場所ですよね?先輩、何を買いますか?・・ところで、もし行けるとしたら先輩はお金を幾らくらい持って行きます?まだクレジットカードは使えないですからね・・・いっその事、ボクと一緒に行ってみましょうか?想像するだけで、絶対楽しいですよね・・・”ルーアン”(当時先輩が入り浸っていたアメ横の喫茶店)でボクの事を延々と説教したり、ぶったりいじめたりしないんだったら一緒に行ってあげてもいいですよ・・・(笑)」 

*注:ここから先は、全部フィクションです・・・

「ところで先輩、本当に行くんだったら到着の日付はいつにしますか?」 

「そりゃァ、あの一番興奮するバラックの時代に決まってるだろ!」 

「いや、だから・・・あのね、日時を特定しなくちゃいけないんですよ・・・じゃァ、ここに有る「毎日グラフ」が、たまたま74年の12月号だから、このタイミングはどうですか?アメ横が年間で一番活気を帯びて来る時期だし、ボクがちょうど上京してアメ横に通い始めた年なんですよ。実際に当時も暮には間違い無く買い物に行っていましたしね。だけど、考えてみたらあの頃のアメ横はアイビーのムードがまだうっすらと残ってはいたけど、米軍の放出品は有るし、HANG TENやBOLT、KENNINGTONとかの西海岸ブランドも登場していたし、ニットのフレアパンツやロングポイントのシャツなんかが定着し始めて、それこそあれもこれも混じっていて、間違い無くちょっとヤンキーっぽいトラッドムードと共に新しい潮流を同時に体感出来た一番いい時ですよね?」 

「そうだったよなァ、いいねェ最高だね!色々思い出すよ・・じゃァ、そうセットしろ!」 

「先輩、滞在時間は午前11時から12時間ですからね!憶えておいて下さいよ。時間が勿体無いから、”ルーアン”に行っちゃダメですよ。それから歴史が変わっちゃいけないから当時の人達にはボク達が違うヒトに見えるようになっていますからね、だから昔の知り合いとか、よもや自分自身を見つけても変に接触して素性が分かるような会話をしちゃ絶対ダメですからね!」 

「分かったよ、だけど・・・たった12時間かよ?ちょっと、短くねェか?」 

「だって先輩が料金を値切り倒すからじゃないですか!」 

・・・・で、めでたく先輩とボクはタイムマシンに乗って懐かしい1974年12月のアメ横に行く事になった・・・ 

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「じゃァ、出発の乾杯と行きましょうよ!せーの、乾杯~♪ ところで、先輩はマジでそのKENNINGTONのセーターとデニムのフレアで行くんですか?まさかのシャツがロングポイントですよ!」 

「うるさいよ、お前は・・もっと先輩をリスペクトしろよ!」 

「あ、ミッキーのセーターがとってもステキですよ!特に沢山の毛玉が風格バッチリですもんね・・・それより先輩、ボクなんか、とっておきのLEVI’SのピケのGジャンに#646のコーデュロイ、シャツがケニントンの隠れミッキーなんですよ!」 

「お前こそ何だよ?世界一ダッセ~なァ!柄が小さ過ぎて何だか分かんねェじゃん、もっとミッキーがバ~ン!と入ったのにしろよ!そんなんじゃ全然アメ横の女子にウケねぇぞ!」 

「ちょっと、ちょっと、先輩!目的を変えないで下さいよォ・・・」 

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 かくして我々を乗せたタイムマシンは時空を超えて42年前のアメ横に降り立ったのだった・・・。 

「先輩、なかなかいいポイントに到着しましたよ。ほら”舶来品コーナー入口”がすぐでしょ。ここはかなり通な入口ですよね?入ってすぐ左に行くと”ミウラ”と”る~ふ”ですよ。真っ直ぐ突き当たってしまうと、そのままトイレに突撃ですもんね!」 

「ちょっと待て!違うんだよ、ここじゃねェんだよ!オレはいつも”ムラサキ・スポーツ”の脇から入るんだよ!”甘利”化粧品の折りたたみのパイプ椅子に座ったおネーちゃんが居る所で・・・」 

「もう、いいから入りましょう!わがままなんだからァ・・・」 

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 地図で見ると我々はちょうど鮮魚を扱う”関商店”と”伊藤商店”の間の通路の入口の所に居たんだよね。入って左に行くと、すぐ”ミウラ”と”る~ふ”。そしてすぐ角を右に行くと”マルビシ”が有るんだよね。(右側の矢印が”ムラサキ・スポーツ”の脇の入口) 

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「先輩、とうとう着きましたよ!”ミウラ”ですよ・・・そうそう、こんなでしたよね~!ボク、SMITH’Sのペインターをもう扱っているか聞いてみますよ、昔買いそびれた尾錠の付いているヤツ。あ、CONVERSEのスエードのサイズも有るかどうか聞いてみようっと!」 

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「お前、憶えてるか?この頃の”ミウラ”は、わざわざ出してもらったり、試着なんてしたら必ず買わなくちゃダメなんだぞ!」 

「分かってますよ・・・ダメなら未来に戻ってから誰かに譲りますから!ところでボク、PRO KEDSのメッシュの2本線のヤツを買い損ねたんですよ、ちょうどこの頃だと思うんですけど、前は”ハナカワ”で見たのかなァ・・どこかに無いですかね?あれのラインがグリーンのがカッコいいんですよォ!あ、それとMAVERICKってもうこの頃には入っているのかなァ?もし有ったら「赤ステ」(赤いステッチ)のシャンブレーのGジャンの大きいサイズとデニムのストレートが無いですかね?当時フレアしか買わなかったんですよ。Gジャンも小さくなっちゃって着られないし。あ、ウェスタンシャツも欲しいなァ・・・」 

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「ところで先輩は知らない間に”ミウラ”でこっそり何を買ったんですか?ちょっとその茶袋の中を見せて下さいよォ」 

「うるさいな、見せねェよ!」 

「あ~つ!何かシャンブレーのシャツが見えますよ!それ、WASHINGTON DEE CEE?それともELYか何かですか?綿100%のヤツ?それともT/Cのですか?」 

「うるさいってば!お前は自分の買い物をしてろ!これはなァ、洗うといい色になるんだよ」 

「”ミウラ”はKENNINGTONなんかも、確かこの頃からガンガン入り始めたんですよね!あ、懐かしいなァ・・天井の所にミッキーの「耳」キャップが有りますよ。昔、妹にアレ買って送ってあげたんですよ。ちょっとMAVERICKのGジャンとかパンツを爆買いしますか?あれ、先輩は・・」 

 気が付いたら先輩は、お隣の”る~ふ”に行っていた。 

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 ”る~ふ”は、そうだ、そうだ・・こんなだった。間口は”ミウラ”より広いけど奥行はあんまり無かったんだよね。そして左に見えるガラスケースに羨望のお宝が並んでいたんだよ。 

 ”る~ふ”にはまだ大人のアメトラムードが漂う本物アイテムも新しいモノに混じってガッチリ揃っていた。 

「おい、BOSTONIANが有るぞ。オレはあれを行くからお前は手を出すなよ!」 

「え~、どうして・・ボクもBOSTONIAN欲しいよォ・・・」 

「お前には100万年早いんだよ!大人しくBASSかSEBAGOにしろ」 

「え~・・・いいもん、別に・・BASSにするから・・・ちょうどサイズの大きいヤツが欲しかったし」 

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 BASSと言えば、やっぱり今だに復刻しないSCOTCH GRAINのペニーローファーが欲しいな。年齢と共に足のサイズが大きくなっちゃったから・・・今、履けるサイズのブラウンとブラックを買って行く事にするよ。それと、もしサイズが有ればBASSのバックルローファーも欲しいなァ。あ、そうそう、ブラックも有ったりしないかなァ・・・ 

 これは本当に大好きな靴だったからねェ・・フレアパンツにもバッチリ履けるデザインだったからスゴく重宝したんだよね。 

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「ところで、先輩は何をこそこそと物色してたんですか?あ~、もう買ってる・・・」 

「ペンギンだよ、こっちに少し有るぜ」 

「あ~ボクも欲しい~!ところでMUNSINGWEARは”る~ふ”に有ったけどIZODって、もうちょっと後でしたっけ?」 

「たぶん、来年か再来年の登場じゃねェか?」 

「そしたら、カラーペンギンも少し先ですね。あ、そうだボウリング・ペンギンがどこかに残ってませんかね?先輩、”丸高商店”か”林実業”に行きませんか?あ、その前に”る~ふ”でボクBARACUTAを何枚か買わなくちゃ。昔ながらのシルエットでサイズの大きいヤツ・・あ、水色も有るかなァ?」 

「また買うのかよ、バカだろ!お前、裏チェックなんかミーハーなんだから・・硬派のアメリカンはPETERSとかを着るんだよ!オレはこっちにするからな。」 

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「いいですよ、ミーハーで。21世紀にはPETERSなんて誰も知らないじゃないですか。」 

「うるさいな、分かったよ!・・・で、何だっけか?」 

「先輩!時間が勿体無いから”る~ふ”の向かいの”エッチ屋”(松下屋)で電動のお人形触ってちゃダメですよ~、そんなのは21世紀の方がはるかにスグレているんだから、それに手に持っているエロ本も棚に戻して下さいよォ・・・それより幻のボウリング・ペンギンの捜索しましょうよ。」 

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「ペンギンだったら、Pモンが”マルビシ”にねェか?」 

「そうだ、マンシングの立ち衿のウィンドブレーカーの今着られるLサイズのグリーンとかネイビーが欲しいんですよ!太っちゃって、Mサイズが小さくなっちゃったから・・”る~ふ”に無かったら”マルビシ”に有るかも知れないですね!」 

「だったら、その小さいヤツをオレにくれよ!あ、だけどカラシ色以外は要らねェからな・・」 

「どっちにしても、絶対にヤですよ・・・。じゃ、さっそくマル・ママに会いに行きましょう!元気ですかね?」 

「オレは、マル・パパの方が好きだったなァ・・・」 

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 今は、仮に昔のアメ横の話しになったとしても話題になる事は、ほとんど無いけれど”マルビシ”は、ほっそり系のパパとぽっちゃり系のママがやっていて、PXからの商品がガッチリ揃っている事で当時ウルサ型のマニア達には知れ渡っているお店だった。 

 時々息子さんだと思われるお兄さんにも遭遇したけど、ボクはママが好きだった。お店の奥には当時ガラスケースが有って、なぜかチャイナ服も一緒に売っているというアメ横らしいファンキーなお店だったんだよ。 

「やりましたね~!先輩、FREEMANのデザートブーツが有りますよ!オレ、ダブル、いや予備も含めてトリプル買いしますけど先輩も一緒に買いましょうよ!」 

「やっぱりプレスのパンツとか#646のデニムにはコレだよな!昔は6ハーフで履けたんだよ。だけど今回は7ハーフにするかァ、8かなァ・・履いてると足が痛くなるんだよ!ついでにHUSH PUPPYがその辺にねェか?」 

「じゃァ、ひょっとして少し前のBATES FLOATERSとかも残っているかも知れませんねェ。奥の方に残って無いかママに聞いてみますよ」 

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「おい、”マルビシ”と言えばBURLINGTONのソックス買わなきゃ!」 

「あ、そうだった!派手な色いっぱい選んで100年分買いましょう!ボク、箱ごと買いますよ!それとHANESやSPRUCEのTシャツも有りますよ、LサイズのリンガーとかポケTとかを何枚か買って行こうっと。先輩はTシャツは要らないですか?」 

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「一番ネックの伸びないJOCKEYのハイネックTが有るのは”る~ふ”だっけ?」 

「多分そうですけど、ちょっと今日は見てないですね。あ、先輩”玉美”に行けば絶対に有りますよ!後であっちに探しに行きましょうよ。JOCKEYも箱買いしますか?」 

 とにかく当時は、ヤンキー臭いアメリカンを気取るのにボタンダウンやシャンブレーのシャツの開けた襟元から覗くパチっと詰まったTシャツのネック部分の面積は絶対的に大事なポイントだった。ボクなんかJOCKEYと出会うまでは、ネックの伸びちゃったBVDとかVANのTシャツを前後逆に着たりもしていたよ。着心地が悪いから1日中気持ちが悪いんだけど、面積が大事だったからね・・・。 

 その点JOCKEYの”BO’SUN”と呼ばれる、ややハイネックのTシャツは古くなってボディがヨレヨレになって穴が開き始めてもネックは全く伸びないという革命的なアイテムだった。 

「ところで、そろそろお腹が減りませんか?遅い昼メシに、どこか行きましょうよ。だけど今日は”オレンジ”のカレーはやめましょうね、もっとガッツリ食いましょうよ・・・そうだ先輩、”まんぷく”に行きましょう!」 

「”まんぷく”かァ・・・いいねェ、久し振りに行くか。」 

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「ボク、メンチカツに目玉焼き乗せにしますけど、先輩はどうします?」 

「バ~カ!この店では、通はハムカツなんだよ!お前全然分かってねェなァ・・・何年通ってんだよ?」 

「40年以上ですけど・・・」 

 ”まんぷく”は、バイト先に居たアメ横通の先輩に初めて連れて来てもらったのが、ちょうどこの74年だったんだけど、「ここでは、メンチが一番美味い!他は食うな!」と、その先輩から言われたので、実はとんかつは一度も食べた事が無いんだよね。 

 それである時なんか、おじさんから「うちはとんかつ屋なんだけど、あんたは、いつもメンチしか食べないねェ・・・歯でも悪いの?」って、言われた事が有るよ。(注:”まんぷく”は今年の春頃にとうとう閉店してしまったという信頼筋からの情報が最近有ったんだよ。本当ならマジ残念だと思う・・・メンチの食い納めをしたかったよ。)

「ところで、この後どこに行きますか?そうそう”守屋商店”に行かないとマズいですよね?」 

「おゥ、そうだな。あそこはやっぱりスゴいよ、他では見た事が無いLEVI’Sのプレスとか有るんだよな。最初はさ、蒲田のガラス屋のセガレに守屋を教えてもらってさ・・・」 

「ボクも今着てるLEVI’SのホワイトピケのGジャンを初めて買ったのが、あそこだったですよ。じゃァ、ボチボチ行きますか?」 

「おい、何か、その辺りの店から聴こえて来るBGMが懐かしくねェか?」 

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「あ、ホントですね~!懐かしいなァ。でも、今ここでは一番新しいんじゃ無いですか?そう言えば去年、先輩のバンドが”ロコモーション”やりましたよね!じゃァ、今度は”まるきん”を左に見ながら”みのりや”の所から入りますか?入ってすぐ左に行くと”守屋商店”でしたよね。」 

「おい、”まるきん”の前の”博雅”の肉そばでも良かったな。確か、アグネス・ラムの親戚の家とかいう店だったっけ・・・」 

「ほらほら、先輩行きますよ~・・・着きましたよ!”守屋商店”こんなでしたよね・・・今日はオジさんが居ますよ。相変わらずジーパンに埋もれてますねェ・・・」 

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「ボクは、#518のプレスのホワイトの大きいサイズが欲しいんですよ!あ、あとLEEの#400のデニムも・・・#400はシルエットが細身でカッコ良くって大好きなんですよォ、ロゴも大文字でニョロ~のステッチが入っていないし・・あ、そうだ、先輩!金茶色とかのコーデュロイのブッシュパンツって、登場するのは来年くらいでしたっけ?」 

「多分1年か2年先じゃね?」 

「じゃァ今回先輩は、またLEVI’Sの必殺”縞ベル”(注:太い派手なストライプ柄のベルボトムの事)あたりを狙っちゃいますか?」 

「何だ、文句有んのかよ?お前はアレ穿く勇気が無いだろ?エレキ持ったらアレしかねェだろが、世界一カッコいいに決まってんだよ!」

「何だかゴールデンカップスみたいですね。そうだ、先輩・・来年の75年に発売されるan anで見たんですけど、LEVI’Sの#502は”守屋商店”より外の”ヒノヤ”の方が安いんですよ!1本3000円ですよ・・・未来に持って帰ればきっと100倍くらいの値段で売れるかも知れませんよねェ・・」 

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「おい、ところでアカネちゃんとこ(化粧品の”フクダヤ”)はどっちだっけ?」 

「ここから”ツナシマ”の方に抜けて、先輩が好きだったメガネのおじさんの”大橋”(輸入菓子屋さん)を右に行くと例のタバコの自販機ですよ。」 

「そう言えば、ここの”ツナシマ”でアメリカの黄緑色した電動ミキサーを買ったんだよ、電動の人形じゃねェぞ。21世紀でもたまに家で使ってるんだよ、ちょっと音がウルさいんだけどな。」 

「先輩、スゴいですよ!ハイライトが80円だって!セブンスターだって100円・・・洋モクは、当時いくらでした?180円くらいでしたっけね?今、買ったヒトに教えてあげたいですよね、あと40年経つと1箱500円位になるから今のうちに身体中が黄色くなるくらい思い切り吸っておいた方がいいですよって。絶対に信じないでしょうけどねェ・・・ボク、KOOLのオールドパッケージをいっぱい買って行ってみんなのお土産にしますよ。そう言えば先輩、この頃メンソール吸うヤツはインポになるって都市伝説が有りましたよね?」 

「アハハ・・そうだったな、それでお前はどうなんだ?」 

「いや、無事だったみたいですけど、脳とか他の部分に来ちゃったみたいです・・・」 

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「お前は、アカネちゃんとこで何買うんだよ?」 

「先輩、シーブリーズの透明のボトルに入ってたヤツ憶えてますか?まだ液体の色が黄色くて透明じゃ無い時代の・・・何か匂いとか刺激が昔の方が明らかに強かったと思うんですよ。アレが有ったら欲しいんですよね。あ、それとまだドイツから輸入物の時代のセッチマ歯磨き、まとめて買いたいんですよ。アレ、舌の先っちょがビリビリするような強烈な歯磨きで1回でピッカピッカになったんだけど、サンスターがライセンス生産?するようになったら骨抜きにされちゃって、何だか普通の歯磨きになっちゃったんですよ。アカネちゃんが、毎日使うと3年くらいで歯が半分の大きさになるから週に1回にしときなよ・・・ってダミ声で冗談言ってたのが懐かしいですよ。ところで”ハナカワ”も覗きますか?掛布に似た番頭さん居るかなァ・・・あそこはやっぱりSEBAGOですよね、それとHANESとKEDSとか・・・ボク、KEDSのメッシュを聞いてみようっと・・・あれ?先輩どこに行くんですか?”ハナカワ”は見ないの?」 

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「おいPARISとかHICKOKのベルトってどこに売ってたっけ?」 

「確か、”マルビシ”の近くの”永山商店”とかあの辺りじゃ無かったでしたっけ?」 

「じゃァ、トンネル横丁の”丸高商店”でペンギンを見ながら、あっちに1回戻るか?オレ、PARISの先っちょを斜めにカットしたベルトの新しいのが欲しいんだよ・・・」 

「先輩、また同じのを買ってどうするんですか?」 

「お前に言われたくないよ!大体、ヒトの事言えんのかよ?」 

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「あ~っ!先輩、ヤバいですよ!”ミウラ”の所のシャッターの前にCAMP7のダウンベストを着た昔のボクが居ますよ!」 

「お~っ!ホントだ、お前細くて、ガリガリじゃん!」 

「メシも食わないで服を買ってましたからね・・・」 

「じゃァ、いい機会だからお前、自分の所に行って今日の晩飯代の資金相談をして来いよ。少し持ってねェか?って・・・せっかくだから美味いもの食おうぜ。」 

「ヤですよ~、そんなの。どうせ幾らも持って無いし。それに歴史が変わったらマズいじゃ無いですかァ。それより”玉美”の方に行きましょうよ。」 

「じゃァ、”ヤング”(”中田商店”の前のウェスタン屋さん)の前の通路から入るか・・・」 

「先輩、ちょっと”根津商店”見ましょうよ!・・ほらァ、DICKIESのプレスのパンツがいっぱい有りますよ!コイツも買って行きますか?ここには、有名な店員が居ましたよね?あれ?今は、たぶんどこかにサボりに行ってるんですよ。」 

「あ~、あいつね。ヒトの格好を上から下までジ~っと値踏みしやがるんだよな・・・」 

「ここの白髪のオジさんはHANESの事を「ハンス」って呼ぶんですよね。ボク、ここで最初のTOP SIDERを買ったんですよ。あ、BVDのボタンダウンも買った事あるなァ、ロングポイントのヤツ・・・後で後悔したんだけど。」 

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「ところで、何眺めてるんだよ?」 

「これ見て下さいよ~!500円札。アカネちゃんとこでくれたお釣りですよ・・・21世紀に持って帰ろうかと思って・・・今のヤング達知らないですよ~こんなの。お金のヴィンテージだもんねェ、珍しがって1000円札と交換出来るかなァ?」 

「ウケねェよ!バカだなァ、お前は・・・500円は500円なんだよ。銀行に聞いてみろよ!」 

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「ところで先輩、”根津商店”の向かいの”加藤”憶えてますか?ここはLEVI’SとかLEEの古いヤツが時々有るんですけど、オヤジがいつ来ても必ず寝てましたよね・・・すみませ~ん、とか言って起こすと「何だよ、どれ?・・・買うの?」って真っ赤な目をして言うから怖いんですよォ・・・さ、先輩”玉美”ですよ。お向かいは”林実業”ですよね、懐かしいなァ・・・林のお姉さん、居ないかなァ?」 

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「ところで何だよ、そのサイコロみたいな箱は?」 

「だからJOCKEYのTシャツですよ。10枚入ってるんです。Lサイズを2箱買っちゃった・・・あれ?先輩は2枚でいいの?」 

「いいんだよオレは、今着てるのはヨーロッパのもっといいヤツよ・・・お前とは基本的に持ち物が違うんだよ!おい、宇佐美に行くぞ。」

「あ、懐かしいですね!オバちゃん元気ですかね?その辺のお菓子屋さんでアメでも買って差し入れしますか?きっとマケてくれますよ。場所はどこでしたっけ?・・・」 

「何か、”玉美”のもう一本向こうの角を左に入って、クネクネと行った所だよな?」 

「ボンヤリですけど、そんな記憶ですね。行ってみましょうよ!PULITANのセーターとか有ったら欲しいですよね?前にモヘアのVネックを見た事が有るんですよ・・・あの時買えば良かった。今ならサイズがちょうどなのに・・・」

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 そして・・・そんなこんなで、手に持ちきれない程の大荷物になってしまった我々は残り時間を気にしながらようやく最後の晩餐とシャレ込む事になった。 

「先輩、何食います?やっぱり、あそこですか?・・・」 

「決まってるだろ!サッと行って祝杯を上げるぞ!」

 そこで向かったのは、やっぱり”陽山道”。昔から焼き肉ならココだった・・・今でも思い出すのは、買ったばかりの#646のコーデュロイのホワイトにお箸からカルビがヒザの上に墜落し、魚拓のように「カルビ拓」になってしまった事だった。 

 お店のヒトに台所用洗剤を借りてトイレに行き、その場で#646を脱いで洗面台で洗った事が有ったんだよね。後からトイレに来たヒトがその景色見てビビって出てっちゃって・・・幸いにも何とかキレイになってくれたけど、一人で大騒ぎをしたよ。そして帰る頃にはコンロの熱のせいで#646は乾いていた。 

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「じゃ、お疲れ様ァ~・・・乾杯~!いやァ、先輩メチャクチャ楽しかったですね~!」 

「最高だよな!おい、肉ガンガン食おうぜ・・・」 

「じゃァ、先輩、希少部位の「座布団カルビ」食いましょうよ!アレ超美味いっすよね!21世紀には、どうしてだか、ここのお店のメニューから姿を消したんですけどね。」 

 そして適度に酔いも回り始め、誰にも止められない我々のアメ横よもやま話しは尽きる事が無く延々と続いたのであった。 

 かくして夜も更け始め、とうとう帰路に付く時間が近づいて来てしまった。 

「先輩・・・そろそろ21世紀に帰らなくちゃ、あ~寝てる!まだ壊れちゃダメですよォ、起きて下さいよ!」 

「うるせェんだよ、お前は・・・起きてるよ!・・・シメのラーメン頼んだか?」 

「シメのラーメンは21世紀に出来た”陽山道”広小路支店のメニューですよ、この時代には、まだ無いっすよ!あ、迎えに来ちゃったみたいですね・・・」 

「zzz・・・・・・」 

「あ~っ!先輩・・ヤバいっすよ。タイムマシンに荷物が全部乗らないみたい・・・どうします?靴の箱とか全部捨てても無理かも・・・ねェ、先輩!聞いてるの?」 

「zzz・・・・・・」 

「あ~、また寝てる~!」 

 珍道中のこの後の顛末はご想像にお任せ致します・・・ 

【お詫び】 

 今回のブログは、日本中数えても、おそらく数名レベルしか理解出来ない内容になってしまいました。ゴメンナサイ・・・次回は、もっと分かりやすい内容のブログに致します。 

注:文中の地図等は、昭和50年12月発刊の月刊「angle」より引用させて頂きました。

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