半世紀以上も変わらないという事がスゴいと思うよ
- 2017.09.03
- 玉木朗の超B級アーカイブ
トラッドやアイビースタイルといったアメリカンクロージングを語る際に、絶対に外すワケにいかないアイテムが、まずネイビーのブレザーで・・・って、別に今ここで説明しなくてもいいよね。
先日ブログに書いたけど、ボクが初めてブレザーというものを買ってもらったのは中学1年生のクリスマスの時でね。そう、勿論VANのヤツだよ。当時の大人達は何故か「ブレザー」では無く「ブレザーコート」と呼んでいる時代だった。
色はネイビーでピーコートみたいに少しモサモサしたメルトンっぽい厚めの素材だったけど、何故か裏地にはロイヤルスチュアート風?の赤っぽいタータンチェックが貼り付けて有るという、今考えればちょっと「なんちゃって系」のアイテムで背中のベントが無いという不思議なシロモノだったんだよね。
でもボクは十分嬉しくて「やった~!VAN のブレザーやで」ってなもんだった。
サイズは、どうせすぐに成長して着られなくなるからとMサイズを着せられたんだけど当時のボクには、まだ袖も長く、ちょっと大きかったから最初は学生服の上に防寒着として着る事も出来たぐらいだったんだよね。
ただ本人はかなり気に入っていて、周りも褒めてくれたりするもんだから、調子に乗って色々な所に行く時には必ずと言っていいほど着ていたよ。
ところが正月にそれを着て父親の実家に行ったら、父親の兄貴が父親に向かって「お前んとこは何や?中学生の子供に背広を着せとるんか。」嫌味たらしく言ったのが聞こえたから「背広ちゃうもんね、これはブレザーやで。おっさん、知らんのか?」こっそりと聞こえないように言ってやった。
その後高校に入る頃になったら、さすがにもうサイズが合わなくなってしまい(注:当時のVANのMサイズは今の感覚と違い、割と小さめだった。)ヒジや袖口も生地が薄くなってスリ切れそうになっていたから通学用としても新しいブレザーが必要になったんだよね。
そしてその頃にはすでに「メンクラ」を読んでいたから、いわゆるアイビースタイルのスーツやブレザーの定義は、大体認識していたし。
ブレザーの場合、フロントはメタルの3つボタンで段返り、胸ポケットがパッチポケットで脇ポケットはパッチアンドフラップ。背中は背抜き仕立てでベントはセンターフックベント。袖口のボタンは2個。そして肩やラペル、ポケットにウェルトシームと呼ばれるミシンステッチが入る・・・正しいアイビーブレザーの定義だった。
そして待ちかねたお休みの日にVANショップに行き新しいネイビーブレザーを買ってもらう事が出来た。
今度はちゃんと、あちこちディテールをチェックしてね。「よっしゃ、完璧やん!」一応KENTのブレザーも試着してみたんだけど、顔見知りのスタッフのお兄さんに、「KENTのはアイビースタイルじゃ無いからフックベントのブレザーは無いんだよ。」言われて「へ~」と思いながら、実はまだそこのところ(注:トラッドとアイビーの概念の違い)を良く分かっていなかった。
下の画像のモノがそうなんだけど、今のモノと変わらないよね。(痩せれば、まだ着れるんだよなァ・・・)
ある記録が有ってね、VANが本格的にアイビースタイルのブレザーを発表し流通させ始めたのは60年頃の事で、それが徐々に全国に広がり、雑誌「男の服飾」が「メンズクラブ」と名前を変えた同年の63年に一挙にアイビーの大ブームとなったという事のようだった。
「モノマガジン」で63年製のVANのブレザーの写真を見つけて来たよ。上2つ掛けの時代のアイビーブレザーだけど他のディテールは現在と同じだよね。
実際に、もう半世紀以上前のモノなのに古さを全然感じないのは、ビートルズの音楽と同じで、ずっと長い間同じモノが変化をせず世の中に常に存在し、そして機会有るごとに見聞きし続けているからだと思うんだよね。
一方、どんどん変化するから以前のモノに古さを感じるようになるのが例えば家電やクルマだったりするような気がするんだよ。
因みにその頃のテレビやクルマはご覧の通りで、やっぱりレトロ感満載だよね?
サンヨーテレビの広告には「日本では一生にいちどしか無い”東京オリンピック”」とコピーが有って、この新型テレビでその歴史的な人類の祭典の素晴らしい映像を観ましょう、という事だったんだろうね。ところで59,800円ってかなり高価だと思うんだけど、今の幾らくらいになるんだろうか。
そしてお隣のクルマは大衆車の優等生、日産ブルーバードだよ。当時うちのクルマはスバル360だったから、ブルーバードがとても大きく見えてさ、それを停めている近所の家がすごく羨ましかったんだよね。
そして高校に入る年に買ってもらったブレザーの頃がこんな具合かな?
今度は「万国博をサンカラーで見よう!」ってさ。まだまだ、カラーテレビはとっても高かったもんね、195,000円だって。そしてクルマはトヨタの初代「セリカ」。たぶん同じ頃だったと思うんだよね、近所のちょっとアイビーでヤンチャなお兄さんが、昼間はいつもピカピカにワックスを掛けていて夜になると派手な音のクラクションを鳴らし、デカい音を立ててぶっ飛ばしてたのを憶えているからね・・・
まァ、こんな事を書き出すとキリが無いからこの辺りにしておこうと思うけど、その後もボクはニュートラを経て、ウェストコースト、プレッピー、アウトドア、デザイナーズ、ヴィンテージ、渋カジ等と、BROOKS BROTHERSを始めRALPH LAUREN など様々なブランドのブレザーに袖を通して来てね。(済みません、本当はこの10数年は、あまり着た事が無いんだけど。)
でもやっぱりここに来て、結局は原点回帰というか最後にやっぱり究極のアイビーディテールのモノが欲しくなったんだよね。
で、全ての仕様の条件を満たし、更に現在手に入る本場アメリカ製のモノと言えば、やっぱりSOUTHWICKの”CAMBRIDGE”にトドメを刺すと思うんだよ。そしてボクのブレザー遍歴は、たぶんここで終止符が打たれる予定なんだけどね。
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