本当に厄除けになるかどうかは知らないよ・・・
- 2015.07.18
- 玉木朗の超B級アーカイブ
そろそろ還暦だってさ。いや、ボクの事だけどね。少し前までは先輩達が還暦を迎える度に「へェ~、もうなの?・・」ってなもんで、とても月日の経つのが早いのに驚いていたんだけど、とうとう自分の番が来ちゃった。実は昨年くらいからボチボチと周りに言われ始めて「絶対に、ヤだからね・」なんて思いながらずっとはぐらかして来たんだけどね、だけどだんだんと逃げ切れなくなっちゃった。あ、でもみんなこの場で忘れてね~!ボクに取っては61才になる手前の単なる通過点なんだから。
ところで、どうして還暦のお祝いに赤い「ちゃんちゃんこ」を着るんだろう?と思ってちょっと調べてみたんだよ。要するに厄除けなんだってね。昔は赤ちゃんが生まれた時に厄除けとして赤い産着を着せたとかで、還暦というのはそのヒトの干支が一巡し生まれた時の干支に戻るという意味合いが有るから産着に着た赤い色をあらためて身に付けるんだと言う事だった。
だけど、赤い「ちゃんちゃんこ」・・ちょっと着たくないなァ、ボク絶対要らないし・・・などと思いながら、ある時SHIPS銀座店のブログを見ていたら、去年還暦だった1つ先輩のアメ横「ミウラ」のハダカにLeeのオーバーオール伝説、SHIPSの雨宮さんが登場していてね。サスガ!だったよ。赤いオルテガのヴェスト、(確かに赤い「ちゃんちゃんこ」だよねェ。)そして渋谷の名店rdb o globeの前淵さんが用意した(のかな?)真っ赤なスーツで還暦のお祝いのパーティに登場・・アハハ、ボクには絶対無理だわ。かなわないや・・
そう言えば20代の始め頃、同い年の友達と「もし還暦を迎えたら「クロス&サイモン」で「トラッド歳時記」の表紙になっているような真っ赤なブレザーを一緒に作りたいね!」なんて言っていたんだよね。(注:くろすとしゆき先生がVANを退社後にオープンしたハイエンドなメンズブティックでちょうど飯倉の交差点辺りに在ったんだっけ・・当時ボク達みたいなロン毛のスニーカーを履いたガキにはちょっとだけハードルが高いムードだったけれど、一度見栄を張ってネイビーのブレザーとオックスフォードのシャツを買った事が有るよ。ちょうど奥ではタキシードの仮縫いか何かをしている初老の紳士が居てね。大人のムードが漂うお店だった。その後太ってしまって着られなくなったブレザーは、10年くらい前にサイズがちょうど良いからって飯野高広くんにあげちゃったんだけどね。)
そんな事を思い出しながら、どうせなら何かカッコいいのを自分で作っちゃえばいいよねェ・・?ぼんやり考えていたら、春頃にMcGREGORの担当の方が「マクレガーは日本で正式にビジネスがスタートして、今年がちょうど50周年なんですよ。」って教えてくれたんだよね。
へ~!そうなんだァ。そう言えば高校生の頃、母親にMcGREGORのセーターとかジャンパーを買ってもらったけれどデパートのヤングコーナー(死語?)の売り場とは別に、特選売り場に行くと輸入物のLACOSTEやMUNSINGWEARなんかと一緒にアメリカ製のMcGREGORも売られていたのを思い出したよ。母親は「VANのマークよりMcGREGORのマーク(ロゴ)の方がずっとセンスがええなァ。」って言っていて、自分でも密かにMcGREGORの立ち襟ジャンパーを普段着に着ていた。たぶん割りと好きで気に入っていたんだろうなァ・・
アメ横時代の先輩の一人は、70年頃アメ横には直モノ(インポート)のMcGREGORが少なかったからわざわざ元町のTHE POPPYまで買いに行っていたんだよって懐かしそうに言っていた事が有ってね。確かに手元に有る昭和38年(63年)のMEN’S CLUBの中のTHE POPPYの紹介記事を見ると、ちゃんとMcGREGORのカッコいいサインがエラそうに写り込んでいるもんね。52年前だからきっと垂涎モノのレアな直モノしか無かった時代だったんだろうね。
そして半世紀が経過しMcGREGORはボク達の手の届くモノになった。
「じゃァ、せっかくの機会だから何か50周年記念のアイテムでも一緒に作りましょうか?」なんて最初は半分冗談みたいに言いながら突如思い付いたのが最近は何故か発売されていないMcGREGORの名品、赤いANTI- FREEZE JACKETだったんだよね。そう、あの泣く子も黙る名画「理由なき反抗」でジェームス・ディーンが着ていたヤツ。
おまけに「理由なき反抗」は偶然にもボクの生まれた1955年の作品でちょうど公開から今年で60周年を迎えるんだけど同時に自分の還暦の60才にも無理やりコジ付けて「コレは、やっぱり記念として作るしか無いか!」などと、だんだんアタマの中で勝手にボルテージが上がっちゃってね。
で、めでたくMcGREGORの50周年記念ANTI-FREEZE JACKETの赤いヤツと、そして長らく発売されなかったマニアックなブラックの2色で別注する事になっちゃった。ただ、もちろんこのアイテムは今までにも何度か発売はされているんだよ。だけどいつもちょっとづつ「惜しいなァ」と思う事が個人的に有ってさ。
だけど今度は、せっかくこの機会にボク自身がこだわって作るんだからと思って、細かい仕様だとかをあれこれ考え始めたら色々と幾つかアイデアも出て来たんだよね。だけどいつもニコニコしているH君という生産担当者に1つずつ説明をし始めると表情がいちいち曇るんだよ。だけど、結局どうしても譲れない部分も幾つか有ってさ。
それで最終的に工賃は割高なんだけど日本製にせざるを得なくなっちゃったんだよね。その代わり何だかうまく行きそうな気がして来たよ。
まずね、どうしても実現したかったのが、まず裏地のカラーなんだよね。映画を観ると分かるんだけどジェームス・ディーンの着ているジャケットの裏地はブラウンのボアなんだよね。ところがMcGREGORのANTI-FREEZEの裏地の基本仕様はボクの知る限りではいつも白いボアなんだよ。これはボクが今までに見て来た商品やヴィンテージ、そして広告なんかにもブラウンのモノは見た事が無かったように思うからずっと不思議だったんだよね。ひょっとしてあの映画の衣装、本当はANTI-FREEZEじゃ無いのかなァ?なんて思ったりした事も有ってさ。
ところが割りと最近知った事が有ってね、DVDのメイキング特典映像を観たか、もしくは何か書物で読んだのか思い出せないんだけど、当時の映画関係者のコメントで「理由なき反抗」は最初白黒で撮る作品だったらしいんだよね。ところがワーナー・ブラザーズの社長のツルのひと声でカラーフィルムで撮るという事になり、まずジャケットのカラーを強烈な印象を残す赤に変更し、更に白いTシャツを着ているのを際立たせる為に裏地とTシャツのカラートーンが同化しないよう裏地の交換をコスチューム担当に命じて用意させた・・というような話しだった。そんなエピソードが有ったんだね。その代わりフィルムが高価なので予算配分が変わりエキストラの数を随分減らしたというオチまで付いていた。
結果、ブラウンボアの裏地がめでたく実現する事になったのはいいけれど、ボアの厚みに注文は付けるし、発色のキレイな密度の高いアウターシェルの素材を何とか日本製で探して欲しい・・だとか、ゴールドカラーのヴィンテージスライダーが付いたUNIVERSALジッパーの手配やら、ポケットの中袋のタッチはこうで、ヴィンテージっぽいボタンは探せるかなァ?ジッパーを上まで上げた時の衿の収まり具合はどうよ?などと担当のH君を散々悩ませた挙句、先日ようやくサンプルが上がって来たんだよね。
「う~ん、なかなかいい出来だね・・これなら、まずボクが着たいと思うよ。」なんてサンプルを眺めながら悦に入っていたら「あ~っ!」
「もしもし・・H君、このサンプル、ジッパーの逆差しはちゃんと出来ているんだけど、ボクお気に入りのダブルスライダー仕様になってないよ~!」「アレ?ほんとに?・・・・・・」
まァ、本番ではちゃんとやってね!(苦笑)ここの所は、とっても大事なポイントなんだからね。
-
前の記事
残りの人生、欲しいモノは欲しい!着たいモノは着たい! 2015.05.28
-
次の記事
どうでもいいようなワニのお話し 2015.08.10