本当はスタジャン大好きだよ

本当はスタジャン大好きだよ

 スタジャンねェ・・もう何年も着た事が無いんだよ。って言うか肝心のスタジャンそのものが手元に残っていなかったんだよ。昔、ダメだって言うのに「帰りに寒いから貸してよ~」とか言って友達が着てっちゃって結局戻って来なかったり、気に入っていたGOLDEN BEARなんか、全然着て無いじゃん・・という理由だけでボクが知らない間に#MA-1と一緒に教会のバザーか何かに出されちゃったりしてね。唯一奇跡的に残っていたのが、もうサイズが小さくて着られないんだけど高校生の時に初めて買ったSPALDINGのスタジャン。

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 これ、実はVAN JACKETの国産ライセンス製品だったんだけど、ショップのお兄さんが「アメリカのSPALDINGだよ、知ってる?」なんて言うし、袖もレザーで値段がVANのヤツよりも2倍くらいしたから最初の1年間くらいは完全にアメリカ製だと思い込んでいてね。それでよせばいいのに友達とか後輩に自慢しては、見せびらかしたりしていたんだよ。だけど後でVANの作った国産スタジャンだったという真相が判明してメチャクチャにバツの悪い思いをした事が有るよ。みんなゴメンね~!ホントに知らなかったんだから・・

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 でもコレを見ていると思い出すのは、貯めこんだお小遣いやらバイト代を握りしめ母親や兄弟にも内緒で「日帰りアメ横初見参弾丸ツアー」を強行した日の事だよ。あのアメ横に行くんだから!って思って、その日の勝負アウターとしてこのSPALDINGを着て行ったんだよね。その頃ご自慢だったスエードのCONVERSEを履いてさ。 

 ちょうど高3の冬が近かったのかな?世の中は第一次オイルショックの真っ只中、狭い玄関に母親が買い集めたトイレットペーパーの段ボールやら洗剤が積み上がっているのを音を立てないように、そうっとどかしながら明け方に出かけたのを懐かしく思い出すよ。京都から早朝の新幹線に乗って東京に行き、ゴハンも食べないでアメ横中をうろつき最終の新幹線で帰って来るという超呆れた強行軍だった。一応途中で買ったパンを帰りの新幹線の中で食べたけどね、まァ・・若かったんだよね。 

 初めて行くアメ横には本当に興奮したよ。だけど平凡パンチで見た記事以外には全く情報が無かったから、アメ横に行った事が有るという先輩が喫茶店の紙ナプキンに書いてくれた乱暴な略図を唯一の生情報として大事に折りたたんで財布に入れて行ってね・・・だけど先輩の書いてくれた略図には「守屋」や「る~ふ」「ミウラ」とかの名前は書いて有ったと思うけど全然間違っていたから実は全く役に立たなかった。

 その後、上京して大井町の「みどりや」で買ったのがGOLDEN BEARのスタジャンだったんだよね。ボディがダークグリーンでスリーブがクリームのヤツ。そしてその袖口が傷まないようにレザーのプロテクトガードが付いているのがいかにも本場モノという感じで、一発で気に入ってしまってね。そしてその瞬間から主役の座は入れ替わり、SPALDINGはお蔵入りになってしまったんだよ。

 ちょうどその頃アメ横でもアメリカ製のスタジャンはチラホラと売っていて、GOLDEN BEARの他にEMPIREやDELONG、亀のマークのHOLLOWAYなんていうブランドを見る事が出来て、店頭で触ったりタグを見たりするだけで本当にワクワクしたよ。

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 また、「る~ふ」か「マルビシ」だったと思うけどCALIFORNIAのALBIONっていうブランドが有って、それがまたメチャクチャにカッコ良くってさ、襟と袖口のニットがダブルで折り返しが出来るんだよ。そのディテールにスゴく憧れちゃってねェ・・・ボクのGOLDEN BEARは残念ながら襟がシングルだったからね。ところで今回あらためてタグを見ていたら住所がGARDENAなんだね。そうか、そうだったGARDENAに有ったんだよね、ボク後年隣のTORRANCEとGARDENAの境目に住んでいたからきっとご近所さまだったよね。。

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 ってな事を思い出していたら拙書「超B級アーカイブ」の編集担当者として、その節はとってもお世話になった方が先日突然電話を掛けて来られて「クローゼットを整理していたら昔若い頃アメ横で買ったモノで多分玉木さんが良くご存知の懐かしいアイテムが出て来ましてね、もう自分はこういうのを絶対着ないので(注:その担当の方、現在はかなり気合の入ったガチのハイエンド・イタリアンスタイル。)処分しようかと思ったんですけど、もし保存資料として何かのお役に立つようでしたらと思いお電話をしてみました。宜しければ一度お持ちしてみますけどご覧になられますか?」 

 実は自宅がすぐご近所なので数分後に現れたその担当の方、手に持っていたのはあの70年代の名作FOX KNAPPのスタッグジャケット、そして何とALBIONのスタジャンだったんだよね。シュニールレターは付いて無いけど、襟と袖口がお約束のダブルのヤツ。ほとんど着用感が無くってスゴくキレイなの。驚いちゃったね。「え~、ホントに頂いちゃっていいの?」「どうぞ、どうぞ。あんまり美しく無いですけど・・」で、有り難く頂戴する事にしたけど何だか妙~に嬉しかったよ。 

 試しに着てみたら、「あれま!」サイズがちょうどなんだよね。保存資料じゃ無くてボクが着られるよ。ひょんなところから今になって往年のALBIONが向こうから転がり込んで来たみたいでさ、長く生きていると面白い事に遭遇する事もあるもんだと思ったね。 

 ところでALBIONと言えば、今でも思い出すのはその昔先輩が得意気に着ていたUCLAのロゴが付いたALBION。

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 最初POPEYEの創刊号で見たんだよ、もうヨダレが出る程カッコ良くてね。強烈に憧れたよねェ・・アイビーのアイコン、東のYALEなんかに対して西のUCLAの登場は言わばウェストコースト・スタイルの新しいアイコンだったからね。とにかく先輩と同じスタジャンがメチャクチャに欲しかったんだよ。だけどその後も機会が無くて結局最後まで買えなかったけど。 

 それで、せっかくだから今回そのALBIONの画像をブログに載せられないかと思って、先輩に電話をしたら何とまだ普通に着てるよって言うんだよ。それで先輩に無理言ってそのALBIONを撮影用に借りて来ちゃった。

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 スゴイよね、もう40年近く経つのにほとんど傷んで無くって全然現役なんだよ、ビックリだった。 

 ところでボクが働いていた「る~ふ」ではGOLDEN BEARの他にALBION、そして更に高級品だったシカゴのメーカー、KAYE BROS.というスタジャンも扱っていてね。これは価格が高い分ボディのメルトンが分厚くて裏地もモノグラム入り、そして袖のレザーも柔らかくて高級感が有ったから、ちょっと年配のアイビー卒業生の人達がとても気に入ってくれたんだよ。

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 そのKAYE BROS.のスタジャンで忘れられないのは当時、既にミスター・タイガースと呼ばれ始めていた阪神タイガースの掛布が来てボクが一生懸命薦めたKAYE BROS.のスタジャンをスゴく気に入ってくれて買ってくれた事だった。

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 ところが、事あるごとに筋金入りの阪神ファンを自称していたボクだったのに、あんまりハシャギ過ぎて実はサインをもらうのを完全に忘れちゃったんだけどね。 

 そう言えばGOLDEN BEARは最初ボクが買った頃は布製のタグだったんだけど、80年頃だったのかな?「る~ふ」にはレザーにエンボスのロゴのタグのモノが入って来てね。

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 それを「る~ふ」の先輩は絶対今度のタグがカッコいいって言うんだけど、ボクは何だか全然好きになれなくって密かに嫌っていたのを久しぶりに思い出したよ。倉庫に行って布製のタグの付いた古い在庫の中から自分のサイズを一応確認に行ったりしてね。どれかを買ったのかどうかはもう忘れちゃったけど。

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 画像の派手なベタベタワッペンのスタジャンはマニアだった「る~ふ」の後輩からブログ用に写真を撮りたいからと言って借りたヤツなんだよね。実は自分のモノが手元に何も無いからと思って撮影用に何着か貸して?って言ったら、アイツはデカい段ボールいっぱいのスタジャンをこれ見よがしに送って来やがった。 

 ところで映画の中のスタジャンと言うと、すぐ幾つか思い出すんだけど強烈に存在を印象付けた感じがするのは、87年頃に公開されたエディ・マーフィー主演の「ビバリーヒルズ・コップⅡ」なんかはそうだよね。アメリカの刑事は本当にスタジャンを着たあんなカジュアルな格好で拳銃をブッ放すのかどうか知らないけれど、あの映画を観て初めて”DETROIT LIONS”って言うNFLのチームを知ったんだもんね。そしてその頃はまだフランス製だったADIDASのCOUNTRYもエディー・マーフィーが確か「ビバリーヒルズ・コップⅠ」の中で履いてた事によって再注目され、リバイバルヒットのようになった事が有ったんだよ。

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 あのスタジャン、映画の公開直後にアメリカでも人気が出ちゃったんだろうね。ちょうどMAGICという当時はまだL.A.で開催されていたアパレルのコンベンションに行ったらCHALK LINEというスポーツウェアのブランドのブースでその”DETROIT LIONS”のロゴ入りスタジャンが展示されていてね、調子に乗ってボクは結構な枚数を発注して帰った気がするよ。 

 そしてスティーブ・マックイーンのファンの間ですら余り話題にならないと言われる、知る人ぞ知る59年製作の日本未公開作品「セントルイス銀行強盗」。

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 まだ若々しい20代後半の彼の姿が観られるとても貴重な作品なんだけど、確か問題を起こして退学になった元大学の花型フットボウラーという設定で”O”(ゼロじゃ無いよ)のイニシャルレターの付いたスタジャンを着て出て来るんだよね。ストーリー的に派手さは無い作品だけれどザラついたモノクロの映像の中、マックイーンのスタジャン姿や、そしてそれを着た彼の若々しい身のこなしはうっとりするくらいヤンキー臭くてカッコいいんだよ。やっぱりスティーブ・マックイーンは特別だよ、無敵だね。