ヴァンプの方がちょっとヤンチャで大人っぽいんだよ

ヴァンプの方がちょっとヤンチャで大人っぽいんだよ

 ヴァンプってペニーローファーとはまた少し趣が違って別のカッコ良さが有るよね?なんて言っていて最近は横着をして短パンばっかり穿いているからちょっとだけご無沙汰しているけど、時々テーパードシルエットのパンツを穿くとやっぱり無性にヴァンプを履きたくなる時が有るんだよね。アイビースタイルの学生っぽさよりも、もう少しヤンチャで大人っぽく見える所が大好きだなァ。

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 やっぱり何と言っても王道はFLORSHEIMのコブラヴァンプだよねェ、このYUMAと呼ばれているヴァンプは超シンプルなデザインだけど押しの強いコブラの頭の形のような独特の顔付きでかなり完成度が高いと思うんだよね。ボクなんかデニムやショーツだけじゃ無くってスーツ(今は、まず用事が無いけどね・・苦笑)までコレ履けちゃうもん。1足持っているだけで、かなり守備範囲が広いのにはあらためて驚くよね。

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 ところでFLORSHEIMとは別に最近メチャクチャに気に入っているヴァンプが有ってね。昨年だったかな?下北沢にあるヴィンテージ・ショップの名店“SANKA”の高野さんの所に、あんまりやる事が無いからうちの店からママチャリこいでヒマつぶしに喋りに行ったら「今、ちょうどこんなのが・・」と言いながら画像の THE”AZTEC”と名付けられた”JARMAN”のヴァンプを見せてくれた。見た瞬間に「あっ!コレ欲しい!」で、本当に久しぶりに一期一会の秒殺買いをしてしまったよ。サイズもちょうど良くって本当に「やった~!」って感じですごく嬉しかった。

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 こんな顔付きの、いかにも60年代を感じさせる尖ったトゥのシェイプでスコッチグレインのブラックのヴァンプもずっと欲しかったんだよね。おまけに底が減りにくくて少しくらいの雨でもOKな合成底のヤツ・・・久しぶりにドンピシャの100点満点だったよ。

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 画像は65年のSEARSのカタログからなんだけど、テーパード・トラウザーにヴァンプを履くボクの基本イメージはこんな感じね。メチャクチャにカッコいいよね~、ファッション的にその頃のアメリカはアイビースタイルがベースにはなっているんだけど、それが次第に成熟期を迎え始めた頃のとっても完成度が高いボクの大好きな時代だよ。それに靴やシャツのページを見ても欲しいモノだらけ!おまけにめちゃくちゃに安くってね(苦笑)。ボタンダウンなんて、3ドルか4ドルだし、シェルコードバンのウィングチップだって18ドルだよ!タイムマシンに乗って「大人買い」をしに行きたいよね。

 ボクが最初に買ったヴァンプはブラウンのSEBAGOのスコッチグレインのヤツ、だけどNEOLITEという合成底だった。一方仲良しの友達が前後して買ったのはSEBAGOよりも、もっと高級品だった革底のBOSTONIANのヴァンプで一緒に駅のホームとかを歩くと「歩く音が全然違うじゃん。」と、そいつにバカにされていた。ボクはボクで「じゃァ、雨の日に履いてみろよ。チャリンコに乗れる?」などと言い返していた。が、基本的には負けていた。

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 ちょうどその頃もボク達はヴァンプという呼び方をしていたけど時々冗談で「のっぺらぼう」なんて呼んでいた。「のっぺらローファー」と呼んでいるヤツも居たよ。

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 画像の黒いスコッチグレインのモノは先輩から以前撮影用に借りて来たその当時のSEBAGOだけど、ボクのはコレの色違いだったんだよ。でも随分前にゴミになって捨てられちゃったけど・・・。これは先っちょが少し丸くなっているデザインでヤンチャなムードが少し影を潜めている感じだね。

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 一方、アンティークブラウンのモノは60年代っぽいトゥのシェイプで、実はL.L.Bean(ファクトリーはおそらくG H BASS やSEBAGOなんだろうけどね)のモノなんだけど細身のホワイトジーンズには本当に泣けちゃうくらい強烈に合うんだよね、上にボールドストライプやマドラスチェックのボタンダウンなんか着るともう最高の60年代ムード・・・と言いつつ最近までこのヴァンプがずっと行方不明だったんだよ、こないだようやく家の中で発見された時、実はカビが生えていたよ。

 ところで、ボク達が普段使っているヴァンプという呼び方ってどこから来たんだろうね?アメリカではヴァンプって呼ばないみたいだもんね。そう思って久しぶりにAll Aboutでもお馴染みの飯野高広くんに電話をして「ねェ、アメリカではヴァンプって呼ばないよねェ?向こうでは何て呼ぶの?」聞いたら「ヴェネシャンだとか、ヴェネシャン・ローファーと呼びますよォ。多分ヴェネチアのゴンドラの形状あたりから由来しているネーミングなんじゃないでしょうか?」だってさ。「だとすればヴァンプは日本独特の呼び方になるワケ?」「おそらくそうなります。ですけど、基本的にヴァンプとは本来革靴の甲の部分を覆い隠す部位の呼び名ですからね、だから思い付きのテキトーな名前を付けてしまったワケでも無いんでしょうねェ・・。」

 そうか、なるほどねェ・・などと思いながらどこかにそれを裏付ける何かが無いかな?と思いながら色々とあっちこっち調べていたら意外な所から面白い事実が出て来たんだよ。

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 実は最近、イラストレーターの綿谷画伯の家に行ってたまたま60年代ファッションの話しをダラダラとしていたら彼がちょうど65年から66年くらいの古いメンクラを持っていて何冊か出して来てくれてね。「うわァ、スゴいねェ・・・」なんて言いながら一緒に見ていたんだけど結局あれこれパラパラと見ていても話しは尽きないしキリが無いのでお願いしてドサっと借りて来た。それをここ何日か端から端まで眺めていたらあの伝説のVAN REGALの広告が出て来たんだよ。65年なんて言うと、考えてみたらもう半世紀近くも前なんだよね。

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 「ヴァン・リーガルの新しいクツ・VAMP」だって。何だそうか、そういう事だったんだよねェ。(ペニーローファーをコインシューズと表記してあるあたりが何だか時代を感じるよね)要するにVANによる和製英語?のひとつだった。スィングトップやトレーナー、ニューポートジャケット等のお仲間なんだね、へェ~全然知らなかったよ。でもこれでスッキリしたもんね!

 ついでに色々と見ていたらタウンシューズの紹介記事も有って、そこにはヴァンプの事を「ロースイム(低く縫った)スリップォン」と表記してあったよ。この言い方も随分懐かしいよね、当時行きつけだったVANショップのオーナーさんがヴァンプの事を「ローシーム」って呼んでいたんだよ。どういう意味??なんて当時は思って居たけど要するに甲の部分を広く見せる為にモカシン縫いを低い位置に持って来るデザインの事なんだね、正しくはLow Positioned Seam って言うんだろうかね?

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 カッコいい写真も見つけたよ、創刊50号(66年2月号)の中のフットボール観戦中のアイビーな本場ヤング3人衆がテーパード・パンツにヴァンプの理想的な履き方。う~ん、参りました、って感じだね。

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 ライアン・オニールのこんな写真が”HOLLYWOOD AND THE IVY LOOK”という写真集の中に有ったよ。カッコいいけどテキストにはFLORSHEIMのコードバンのYUMAだと書いて有るんだよね、えっ??って思ったけど、まァいいや。

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 最後のアイテムはちょっと異端児だけどFLORSHEIMの通称(と言うか先輩や自分達が呼んでいただけなんだけど)「ロケット・ヴァンプ」。コレはジーンズなんかよりは、もっと大人っぽいテーパード・スラックスやスーツにカッコいいんだよね。スーツと言ってもアイビースーツなどよりはもっと黒人のジャズマンが着ていたようなジャイビースーツやR&B好きのヤンチャなお兄ちゃん達が好んだコンポラ(コンテンポラリー)スーツに合わせるのがカッコいいんだよ。ボクは最後までコンポラは着なかったけど当時トップと呼んでいた細身のプレスパンツにモヘアのカーディガンを着たりする時にはこのヴァンプを履くのが好きだったよ。