しかし、いくつになっても懲りないねェ・・

しかし、いくつになっても懲りないねェ・・

 一応は常にトレンドを追いかけているつもりでも、さすがにボクもトシを取って来るとファッションに対してある部分では段々頑固になって来てね。スタイルやコーディネートも勿論だけど、特に自分自身が長年愛用しているようなお気に入りのアイテムに対しては、あくまでボク個人の尺度の中での話しだけど、どうしてもディテールや素材などに自分だけの理想を求めてしまうと言うか現実的には納得が行かなくて、なかなか安直に妥協しにくくなって来るんだよ。(勿論、自分の体型やサイズは全く納得してないよ・・だけどここは仕方が無いんだよ。)

 長い間着ている同じアイテムでも、都度買い替えながら着用しているとド定番のアイテムと言えども時代と共に様々な部分において微妙に変化をしているのが、その都度分かっちゃってね。 

 それこそシルエットは以前はこんなで今は・・とか、パターンは、素材感は、タグは、ジッパーの仕様は、ボタンは、裏地は、縫製糸の番手や色は・・キリが無いや。 

 ただ単純に良いとか悪いとか言う客観的な尺度では無くて、あくまで個人的な嗜好に裏付けられた主観による極端な好き嫌いの尺度に基づいて、あれやこれやとコダワリが生じるんだよね。仮にそれが博物館級の著名なヴィンテージ・アイテムだとしたら時代が古ければ古いほど価値は有るんだろうけど、ボクは別に何でもかんでも古ければ古いほど素晴らしいと思っているワケでも無いから更に厄介なんだよ。 

 ギターが好きなヒトならこの感覚が分かるかなァ・・ヘッドストックの形はこの時代が好きだけどロゴはもう1代前が好きとか、ペグのメーカーやピックアップは?とかブリッジの形状・・トップやサイド&バックの素材、更にはポジション・マークだとかピックガードの形や色や厚みに至るまで各パーツごとに好きだとか嫌いだとか、全然興味の無いヒトにとっては「だから、それがどうしたんだよ。似たような音は出るんでしょ?」みたいなチンプンカンプンの世界観だよね。 

 だけどファッション・アイテムにおいても時にこういう感覚はとても大切なファクターになるとボクは思っているんだよ。 

 そんなボクの幾つかの定番アイテムの中で、とにかく大好きなのが#G-9。もう慢性的な持病みたいなもんで、何度もダメにしちゃ買い替えながらもう40年以上は着続けているんだけど、中でも裏地がブルーのチェックのヤツは特にお気入りなんだもんね。 

 当然、今現在もそうだけどアメ横に居た時代も同じように毎シーズン取り扱っていたから自ずと細かいマイナーチャンジを含む微妙な変化や進化?を毎回、入荷の度に目の当たりにして喜んだりガッカリしたりしていたんだよね。 

 そんな事を長年考えながら、随分前に廃番になってもう後が無いからと思ってとりわけ大切に着ていた一番お気に入りの#G-9が、昨年くらいからとうとうあちこち穴が空き始めて末期的な症状が顕著になって来たんだよね。確かにその#G-9も細かい仕様に付いては全く不満が無くはなかったけれど、とにかくヒトと同じモノを極端に嫌がるというボクを基本的には十分満足させてくれていたコンビネーションカラーのサックスブルーのヤツで、ライニングは”ROSE”というブルー系のタータンのヤツ。70年代中頃から暫くの間、本当に少量だけど流通していたアイテムなんだよね。 

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 そんな事も有って自分も次に着る新しいのが欲しいもんだから、一度同じモノを復刻出来ないかと思い数年前に当時の代理店からイギリス本国に掛け合って頂いた事も有ったのだけど結果的には実現出来なかったんだよ。 

 そんなある時、近年登場したJAPAN MADEの逸品”TRAFALGER SHIELD”のハリントンジャケットをプロデュースしている社長にこの超ワガママな相談をする機会が有って、コストはかなり掛かるだろうけどせっかくの機会だから別注企画の”COLLECTOR’S EDITION”として日本製で各ディテールやパーツもボクが出来るだけベストだと思う仕様を網羅した復刻のお手伝いをしましょうか、と言ってくれたんだよね。いやァ、嬉しかったねェ・・まずは自分のが欲しいからだけど絶対に頑張って作っちゃお!と思ったもんね。 

 素材は日本製で過去の#G-9に使用されていたモノにかなり良く似た打ち込みの良いコットンポプリンが見付かったから何だかそれだけでも嬉しくなっちゃってね。で、現行のカラーとは少しニュアンスの違う70年代にボクが特に好きだった3色を作る事にした。(前出のサックスブルーに加え、少し明る目のネイビーとカーキ色に近いタンの3色) 

 そして少し着込んだ感じにする為に原反の段階で水を通してみたら程よく表面のツルツル感が消えてかなり良い顔つきになった。 

 こだわったのはやっぱりジッパーだよ。63年のLIFEの表紙を飾ったマックイーンが着ていた#G-9にはメタルジッパーが装着されているんだよね。旧モデルの金属のジッパーが廃止されたのは恐らく67年頃のモデルからなんだけど、ちょうどマックイーンの着ているモデルに使用されているのはスライダーの形状からLIGHTNINGもしくはKYNNOCKというブランドだと思うんだよね。 

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 それでどうしてもオリジナルと同じような形状のスライダーのメタルジッパーを付けたくてあっちこっち探していたら、WALDESというブランドで見つけちゃった。扇型のクラシックな顔つきがやっぱりいいよねェ、気に入ってしまったよ。ところでこのWALDESというブランド、一説によると40年代のTALON社の傘下に存在していたという話しを聞いた事が有るんだけど本当なのかなァ?(画像は左からオリジナルに装着されたLIGHTNINGとKYNNOCK。そして今回採用したWALDES) 

 ところでボク、スライダーの形状はクラシックな扇型のをどうしても付けたかったんだけど、実はダブルスライダー機能がとっても好きなんだよね。だから今回はクラシックなルックスで有りながら、ダブルスライダーというのを強引に実現してしまった。 

 実際はご本家#G-9でダブルスライダー仕様が登場したのは最近も最近、2000年代に入ってからだったんだけどね。 

 それから今回どうしてもコダワり抜いて再現したかったのが背中部分のベンチレート・スリット。これは74年モデルを最後に廃止され、#G-9においては失われてしまった最大の機能だと思っているんだよね。実際にちゃんと裏地側から外部に貫通していて本当にこの部分で通気性を持たせていたんだよ、自分で着ていて違いが分かるもんね。 

 #G-9が本来はゴルフ用のスポーツアウターだった所以がこの部分に集約されていたのに多分コスト削減の為に強引に省略しちゃったディテールなんだよ。左側がオリジナルね。 

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 ところで細かい話しなんだけどヴィンテージ感溢れる袖口の長めの2段リブも実は70年モデル以降、廃止されてしまってね。これもボク大好きなディテールだったから何とか再現したくってメーカーさんがキレる寸前位まで随分苦労を強いてしまった。でもお陰でカッコいい2段リブが実現したんだよ。この長さのリブだと折り返す事も出来るもんね。(左側がオリジナルの2段リブで長さは8cm。) 

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 まァ、他にもポケットの袋布やら内ポケットの仕様、フロントの裾部分の仕様だとかも細かく言うとキリが無いんだけど、結果はかなり満足の行くヤツが出来上がったよ。 

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 やったねェ~、「いいとこ取りの美学」だね!これで各色2着ずつ購入したら、もう一生心配しなくていいよ・・と思いながら、実は以前存在したコットンギャバジンやツイード素材のヤツなんかもコレと同じ仕様で出来るのだったら、と思うとそっちもメチャクチャ欲しくなって来ちゃったよ。 

 やっぱり・・全く懲りてないや・・